ジム・ロジャーズ「日本円が世界で捨てられる日」 この国で始まった、ちょっと恐いシナリオ

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こうした状況のなか、アメリカでは物価上昇の高止まりが懸念され「アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が今後も急激な利上げを続けるのではないか」という見方もされているようだ。バイデン大統領も、一向に気にする気配がない。

世界経済の減速傾向が強まれば強まるほど、基軸通貨であるドルを買う動きにつながりやすい。そうなれば世界中の投資家が「円を買う」という選択肢は、ますますなくなっていく。

日本円が世界中から見捨てられ始めている、という兆候に気づいている投資家は、今はまだ少数かもしれない。大半の投資家はこれまで。「日本円は安全資産であり、リスク回避のための避難通貨」だと考えてきた。その理由はいくつかある。主要国の通貨のなかで、高い評価を得ていること、世界有数の対外資産を保有していること、日本は治安がよく、テロやクーデターなどにより相場が暴落する危険性が低いことなどだ。これまで日本円は非常に信用されていた。しかし、それは過去の出来事になりつつある。

ロシアのルーブルより価値が下がる?

これからの日本の未来を予測するうえで、2022年2月に始まった、ロシアによるウクライナ侵攻を抜きにして進めることはできない。なぜなら、世界の覇権地図を大きく塗り替えた出来事でもあったからだ。

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ウクライナ侵攻が始まって以来、世界中から厳しい経済制裁を受けたロシアにお金を貸したがる国が減ってしまったためか、ロシアの対外債務は比較的少ない。

このように言うと驚く人が多いかもしれないが、現在の日本の財務状況は、ウクライナ戦争に突入した以降のロシアよりも悪い。近ごろのロシアの負債額は、日本よりも少ない状況にある。驚くべきことに、日本よりも健全な財務状況なのだ。

戦争を始めたことによって、国際社会におけるロシアという国家の信用は地に落ちた。「信頼」というものは、為替市場において非常に重要だ。ロシアはこれから、信頼回復に向け行動することになるだろう。

仮に、ロシアがウクライナ侵攻の停止を発表したとしよう。その段階でも日銀が金融緩和を続けていれば、日本円は経済制裁を受けているロシアのルーブルよりも弱い通貨になるかもしれないのだ。

「日本は、国際社会でロシアより信用されている」と思う人は多いだろう。しかし、必ずしもそうとは言い切れない。

世界各国の10年国債利回りを比較すれば一目瞭然だ。アメリカ、ドイツ、イギリスなどの先進国では利回りが上昇しているなか、日本だけがずっと横ばいで推移している。これは、日本に対する信頼が徐々に低下していることの表れといえないだろうか。

皆さんは、本稿をきっかけとして是非とも自分自身を守る方法を学び、きたるべき将来へ備えてほしい。今はそれほど危機感を抱いていない人も、きちんと学べば日本の行く末が心配になり、そうなれば将来に備えて計画的に準備を進めていくことができる。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

ジム・ロジャーズ 投資家、ロジャーズホールディングス会長

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Jim Rogers

1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立し、10年間で4200パーセントという驚異的なリターンを上げる。37歳で引退した後、コロンビア大学で金融論を指導する傍ら、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍。2007年よりシンガポール在住。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。 主な著書に『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見』(日経ビジネス人文庫)、『危機の時代』(日経BP)、『ジム・ロジャーズ 大予測』(東洋経済新報社)『大転換の時代』(プレジデント社)がある。

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