イオンは、なぜここまで苦戦しているのか 見落とされている2つの理由

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プライベートブランドの利点はよくわかる。安価だし、質も安心できるものだろう。バラエティも豊かになってきた。しかし奇妙なもので、プライベートブランドだけに囲まれたとき、その店舗を選択しなくなった。不思議なことに、むしろ他店舗へ足を運ぶようになった。

話をイオンに戻そう。

イオンは日本最大のプライベートブランドとして「トップバリュ」を有している。その年間売り上げ金額は7410億円にも上る。これはイオンリテールにおける売上高の実に2割を占める。イオンはグループとして、このプライベートブランドをより強化するために動いてきた。システムの統合や、物流統合におけるメリットは大きい。なによりグループが拡大していけば、何より大量仕入れによる仕入れ価格引き下げが可能となる。

過去の勝利の方程式が逆に作用している

イオンは実際に、商品仕入れや商品開発を本社に集中させてきた。これによって、巨大なバーゲニングパワーをもったプライベートブランドへ脱皮させようとした。だが、このところの状況が指し示すのは、前述のとおり、プライベートブランド充実の逆効果だ。

現在、地域スーパーの勢いがあり、地方では大手の苦戦が報じられている。それは、地方の細かな需要に追随できる地域スーパーv.s.全国統一的な品揃えを是とする全国スーパーの構図とみればわかりやすい。残念ながら、過去の勝利の方程式が逆に作用している。

また、地域限定商品を買うことのできない不満だけがあるわけではなく、プライベートブランドが多すぎるゆえに、ナショナルブランドの新商品を探せない不満もある。

ところで、この均一化に対して、真っ先に反応したのが、やはりセブン-イレブンだった。セブン-イレブンはもちろんプライベートブランドの品質向上には努めているが、同時に、地域限定商品の劇的な拡充をもくろんでいる。現在は、その地域限定商品の比率は10%にすぎないというが、それを2017年までには50%(!)に引き上げる。地域の特性を考慮した上で、商品仕入をかなり細かく実施する。以前、コンビニエンスストアが広がるほど、日本は金太郎飴のような均一化が生じると危惧した論者がいた。

しかし、現状は、その逆に進んでいるのである。セブンは、売上高2793億円(2014年2月)の万代と組むと発表したが、この意味は、その地域限定商品の点から読み解かねばなるまい。つまり、地域独自商品のサプライチェーンを有すことが、これ以降の差別化と成長にとって欠かせないと判断したのである。

ただし、イオンは挑戦の速度を失ってはいない。スーパー事業とのシナジー効果を創出すべく、競争相手だったドラッグストアを自らに飲み込んだ。ドラッグストア大手のウエルシアホールディングスを子会社化することによって、イオンはドラッグストア事業者としての顔をも持つようになる。実際に、イオングループのドラッグストア売上高は5000億円を超す見込みであり、なんとこれはマツモトキヨシグループを上回るかもしれない。

さらには、大手資本に参加せずにふんばっている食品スーパーもまだまだたくさんある。彼らとの資本提携や、彼らを買収するなどといった業界再編をイオンがしかける可能性はあるだろう。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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