最北の廃線「天北線」、代替バスすら消える現実 かつて長大路線、音威子府―浜頓別間をたどる

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起点の音威子府には10時41分に特急「宗谷」で到着した。札幌からの列車だが、これに接続する天北線を代替しているバス(天北宗谷岬線)は11時20分発で約40分、待たねばならない。

天北宗谷岬線のうち音威子府―中頓別ターミナル間は、1日2往復だけの運転。3往復ある特急をはじめとする宗谷本線の列車との連絡は一応、考えられている程度だ。現に、もう1本の下り便は16時05分音威子府発だが、同時刻には名寄からの普通列車も到着する。

音威子府村交通ターミナル内の宗谷バスの窓口(筆者撮影)

音威子府村が交通ターミナルとして建設した立派な駅舎内には、JR北海道の窓口、天北線資料室とともに宗谷バスの窓口も設けられており、係員がいたので尋ねてみたが、明確に「接続していません」との答えだった。

都市間バスとの接続はある

実際の旭川、札幌方面との旧天北線沿線との往来は、やはり宗谷バスが運行している旭川―鬼志別ターミナル間の「天北号」1往復、札幌―枝幸間1往復・旭川―枝幸間2往復の「えさし号」が主に担っていると見られる。

これらの都市間バスの相互間、および天北宗谷岬線との音威子府での接続は考慮されており、少ないなりに利便性確保の工夫が見られる。16時05分発の天北宗谷岬線は、15時55分に到着する札幌からの「えさし号」との連絡便の位置づけだ。実際に様子を見たが、数人の客が乗り継いだ。

夕刻の音威子府で接続する天北宗谷岬線とえさし号(筆者撮影)

窓口では天北宗谷岬線の乗車券も発売していたので、鬼志別ターミナルまで2550円払って購入した。今どき一般路線バスの乗車券を発売している窓口は珍しい。バス停名はゴム印。日付や運賃はカーボン式の手書きだ。「天北宗谷岬線・曲渕線乗車券」との名称のうち曲渕線の部分が、やはり手書きの横線で消されている。

11時20分発は私1人だけを乗せて発車。すぐ国道275号に入り、浜頓別へ向かう。終点の稚内駅前ターミナルには15時53分着だ。音威子府村は人口700人を切っており、車窓には人家が見当たらない。国道は立派に整備されているが、すれ違う自動車もほぼない。右手には天北線の跡らしい築堤が並走する。

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