メール便廃止のヤマト運輸、次の一手は? 山内雅喜新社長が語る今後の戦略
――上場を前に、JPは値上げを抑え、シェアを奪う戦略に出ている。
今、日本のインフラを支える物流業界には、コスト圧迫で本来の機能を果たせなくなる危険性が浮上している。給与水準を上げ、充分な採用ができる環境にするため、当社も昨年から運賃適正化を行い、コストに合わない部分は直してきた。JPの動きはそうではなく、むしろ逆の方向に進みながら、シェア、数量を獲得している。上場前なのでそれは予測していたが、本来あるべき形と異なるのではないだろうか。
──JPが決めた6000億円での豪州物流大手の買収をどう見ているか。
普通の民間企業であれば、(巨額の投資で)ありえないことだろう。ただ、われわれにとっても、M&Aは当然、戦略の一つだ。物流の価値を高めるのに必要な機能をプラスオンする上での選択肢となる。
海外は、ネットワークの拡大や強化が課題だ。企業間物流を考えると、アジア全体のボーダーレス化が前提条件になる。2010年から、国内の宅急便モデルを上海、シンガポール、香港、マレーシアで行ってきたが、人口密度の高い都市型エリアのみで、全土はカバーしきれていない。
今後、ネットワークを拡充していく中で、自社で展開するだけでなく、地元の有力企業との提携も必要になってくるだろうし、M&Aも浮上するかもしれない。
ドライバー不足の解消策
――国内物流業界に再編余地はあるか。
日本経済を支えるために物流業界全体が健全化していく必要がある。健全化の中で、再編というよりも連携が強まっていくだろう。幹線ネットワークやラストワンマイル、あるいは各地域など、物流各社の強みには特徴がある。これが、全体最適になるよう組んでいく。新たな連携として、インフラの共有化やプラットホームの共同化が進んでいくのではないか。
――ドライバー不足がそうした連携を促すことになるのか。
労働力不足は構造的に避けられない問題で、大きな課題だ。現在、ドライバーが不足しているのは主に長距離輸送の大型トラック。免許取得者が少なく、建築と運輸業界で逼迫している。
当社の場合、どちらかといえばエリアにネットワークを張っている。長距離輸送はパートナーにお願いしているが、契約単価は上昇している。今後は各エリア内の輸送でも労働力が逼迫してくるだろう。そのため主婦の方の活用を進めたり、ターミナルの機械化やIT化を進め効率化を加速させる。
不在による再配送は効率悪化の大きな要因で、IT化でお客様の都合の良い日時を指定してもらう。もしくは、届ける直前に連絡することで印鑑を用意しておいてもらい、軒先での時間短縮を図るなど、地道な努力を積み上げていく。
――2015年度の輸送量の見通しは?
昨年4月の増税後、消費マインドは回復しきっていない。徐々に回復していくだろうが、大きく改善することはないだろう。ただ、eコマースの市場は2ケタ成長が続くとみられる。全体の物量に期待するよりも、成長市場にしっかり取り組み、当社の物量を伸ばしていく。そこに運賃適正化や効率化が加わり、利益成長できると考えている。
(撮影:尾形文繁)
(「週刊東洋経済」2015年3月28日号<23日発売>「この人に聞く」に加筆)
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