福島・双葉病院「39人死亡」避難は正しかったのか 「災害時の患者避難の死亡リスク」を医師が検証

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「電気がないなか、ろうそくの火で点滴の落ちる速度を調整した」「最も神経をすり減らしたのは吸引でした。電気が使えないため(電動の)吸引(器)が利かず、注射器に管をつけ、吸引作業を繰り返した」。これらは、実際にケアにあたったスタッフの言葉です。

とくに、電気が止まったため医療機器が使えないことと、人手不足により十分なケアができなかったことがケアを難しくしました。最終的に病院で39人の患者が亡くなり、認知症の患者1人が行方不明となりました。

双葉病院
筆者作成

■双葉厚生病院

双葉厚生病院は精神科病棟がある総合病院で、震災当時136人が入院していました。電気は止まりませんでしたが、水道とガスは一時的ではあるものの止まりました。

3月12日未明に発令された避難指示を受けた後、混乱しながらも自衛隊が提供したバスやトラックを使って、歩ける患者を避難させました。あるスタッフは、「災害マニュアルなどはなく、カルテも紙だったし、どんなふうにしてこの患者さんたちを運ぼう?となり、現場は混乱しました」と語っています。

同日午後、福島県災害対策本部から福島第一原発の深刻な状況について連絡を受けた病院長は、重症者や寝たきり患者を含むすべての患者を避難させることを決めました。同日の夕方から翌日未明にかけて、福島県災害対策本部が手配した自衛隊のヘリコプターで全患者を避難させました。

同病院では、患者とスタッフがグループを作って避難する方法をとり、安全に避難することができましたが、末期がん患者を含む4人の患者が避難完了前に命を落としました。

双葉厚生病院
筆者作成(注:数字が合わないのは避難開始前に家族が迎えに来て退院した方などがいたため)
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