中国「61年ぶり人口減」過熱するバラマキ競争 中国の専門家からは「港区を倣うべき」の声も

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少子化の原因は明確だ。40年以上続いた一人っ子政策で、出産適齢期の女性の人口が減っていることに加え、教育費の高騰や女性の社会進出で女性が出産をためらうようになった。

さらにコロナ禍で結婚と出産の両方を控える動きが加速した。中国の婚姻数は2013年をピークに減少が続くが、2020年以降の感染が流行し、行動制限が広がった時期には婚姻数が急減している。上海市のロックダウン(都市封鎖)で経済が混乱した2021年4~6月の婚姻数は前年同期比20.1%減少した。

婚姻届の提出や挙式を延期した人も多い。北京市在住の31歳の女性は2021年9月に結婚したが、感染拡大による移動制限が理由で披露宴を2度延期している。引っ越しもままならないため、天津市在住の夫とは別居婚のまま。「親に急かされ続けてどうにか30歳前に結婚できたが、披露宴をしないことには妊娠もできない」と話す。

月5万円の育児手当を支給する村

国と若者の溝は大きい。政治家や官僚は「一人っ子政策を廃止すれば出生数は自然に増える」と楽観していたが、そうはならなかった。少子化が特に深刻な自治体は補助金や休業延長などインセンティブを導入する動きも広がり、いち早く行動した自治体では成果も現れ出している。

中国で最初に出産・育児手当を出したのは広東省の黄竹根村とされている。同村は2017年3月、1人目の出産に一時金3万元(約57万円)の支給を始めた。現地報道によるとそれまで年に20人未満だった出生数は2年半で100人に達した。

第3子の出産が容認された2021年には制度を拡充し、2歳半まで毎月3000元(約5万7000円)、総額9万元(約170万円)の手当を支給する制度に改めた。3000元は中小都市の新卒社会人の初任給に相当する。ただ、同手当の財源は海外で成功した村出身事業家の寄付で賄われており、少子化問題がここまでクローズアップされる前は「特殊事例」と片付けられていた。

一方、自治体が財源を確保し、手当を創設した最初の事例は四川省南部に位置する人口100万人都市の攀枝花市だ。こちらは第3子の出産が容認された直後の2021年7月、2人目以降の子どもが3歳になるまで毎月500元(約1万円)の育児手当を支給すると発表した。

当時は「ミルク代くらいにしかならない」とも揶揄されたが、同市は2022年秋に、同10月末までに650人が補助金の対象になり、648人が支給を申請したとの結果をまとめた。導入1年で出生数は前年比1.62%増加したという。

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