中国「61年ぶり人口減」過熱するバラマキ競争 中国の専門家からは「港区を倣うべき」の声も

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ほかにも手当の導入によって出生数が増えた自治体は複数報告されている。ただ、いずれも物価や給料の低い3級以下の中小都市であり、「教育費や生活費が高い大都市には当てはめにくい」との声が多かった。

そんな中、北京、上海、広州と並ぶ「1級都市」である深圳市が、1人目も対象にした出産・育児手当の導入を検討し、反響を呼んでいる。

深圳市は人口減が発表される直前の今月11日、出産・育児手当の制度化に向け意見を募るための草稿(意見募集稿)を発表した。草稿によると、第1子の出産時に3000元(約5万7000円)の一時金を、3歳になるまで毎年1500元(約2万9000円)の手当を支給する。一時金と育児手当の額はそれぞれ第2子で5000元(約9万5000円)、年間2000元(約3万8000円)、第3子で1万元(約19万円)、年間3000元と子の数に応じて増える。

深圳市が出産・育児手当を導入すれば一級都市として初となる。寂れた漁村から改革・開放の波に乗って1990年以降急成長し、テクノロジー企業が集積する同市は「中国で最も住民の年齢が若い都市」として知られる。市民の平均年齢は33歳で、60歳以上の高齢化率は5%と全国平均を大きく下回る。若い人が多い分、出生率も全国有数の高さだ。

深圳市が抱く危機感

にもかかわらず深圳市の危機感は強い。同市の出生数は一人っ子政策廃止後の2017年をピークに低下が続き、2021年にはピーク時の4分の3に減った。若者が多い都市だけあって女性の晩婚化、出産意欲の低下というトレンドも他地域より鮮明に現れており、このままだと2027年に高齢化社会に突入するとの試算もある。

深圳市が出産・育児手当を導入すれば確かにインパクトが大きいが、検討されている支給額はあまりに心もとない。

第1子の育児手当を月額にすると120元(約2300円)余りで攀枝花市の4分の1に満たない。深圳市民の1人あたりの可処分収入が7万元(約130万円)なのに対し、攀枝花市民は4万4000元(約84万円)。深圳市の調査は同市の0~3歳の育児コストを年間7万5000元(約140万円)と試算しており、月額120元ではミルク代の足しにもならない。

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