個人的には昭和の時代、親しんだ電車はマルーンが似合うシンプルなスタイルに好感を持っていた2300系、3300系である。2300系は1960年から京都線用として製造された車両で、神戸線2000系の兄弟車として同時期に登場した。2000・2300系は阪急初の回生ブレーキと定速運転制御を採用し、「人工頭脳電車」「オートカー」とも呼ばれた。その性能が認められ、2000・2300系は1961年鉄道友の会より第1回の「ローレル賞」を受賞した。
ちなみに2300系は、東海道新幹線と京都線が並行する区間で、新幹線開業前にその高架線を借用して新幹線電車(後の0系)よりも先に新幹線上を走った営業電車だった。この電車も寄る年波には逆らえず2015年3月に運転を終了、55年間の現役生活を終えたが、3300系は2022年9月に撮影してホッとした気分になったものだ。
伝統を維持しつつ変化は続く
阪急の電車の前面はマルーンの塗装に銀色の窓枠、貫通扉の左右に大型の窓を配したシンプルなデザインで筆者は親しんできたが、近年の電車は大きく前頭部のデザインを変え、色合いも微妙に変化している。
前頭部デザインの変化の始まりは1989年に登場した8000系だ。阪急創立80周年を記念して開発された車両で、前面は縦に長い窓の内側に行先・種別表示器を収め、縁がやや出っ張った「額縁スタイル」となり、洗練されながらも阪急色を一変した電車としてファンの間で話題になった。さらに進化したのは2003年に登場した京都線の特急車9300系で、上部の前照灯部分がコブのような独特の形状になり、側面も連続窓となった。
最新車両の(新)1000系は2013年より神戸線にデビューし、同年12月には宝塚線でも運用を開始。翌年には京都線用の兄弟車1300系も登場した。
ただ、阪急電車といえば我々の世代は「鎧戸タイプの日よけ」が印象に残っているが、近年の車両は採用していない。順次リニューアルの際にカーテンに置き換えられてゆくというから、そのうち見られなくなるのかと思うとさみしさもちょっぴり。
阪急電車「名車列伝」
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宝塚線の急行として走る1100系。1000系シリーズは
丸みのある車体が特徴だった(撮影:南正時)
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宝塚線の普通列車として走る1010系。もともとは
神戸線に投入された形式だ(撮影:南正時)
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能勢電鉄に譲渡された元阪急320形
(撮影:南正時)
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能勢電鉄に譲渡された元阪急500形。
急カーブを通過する(撮影:南正時)
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2ドアで小型車体の500形
(撮影:南正時)
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川西能勢口―川西国鉄駅前間を走っていた
能勢電鉄の50形(撮影:南正時)
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京都線特急として活躍した6300系
(撮影:南正時)
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2011年から運行された6300系「京とれいん」。
2022年末に運行終了した(撮影:南正時)
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嵐山線で活躍を続ける6300系
(撮影:南正時)
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嵐山線松尾大社付近を走る6300系
(撮影:南正時)
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松尾大社の大鳥居を横目に走る6300系。嵐山線転用時に
ドア窓が拡大されている(撮影:南正時)
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嵐山線に転じた6300系の座席
(撮影:南正時)
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京都線の3300系は地下鉄堺筋線乗り入れ用として
導入された(撮影:南正時)
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京都線の5300系準急
(撮影:南正時)
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伊丹線塚口の急カーブを走る6000系
(撮影:南正時)
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能勢電鉄に譲渡された6000系。日生エクスプレスのほか
阪急線内で運用されている(撮影:南正時)
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「のせでん」のマークを付けた能勢電鉄6000系
(撮影:南正時)
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リニューアルで表情の変わった7300系
(撮影:南正時)
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阪急の「7777」号車。東京の京王電鉄にもあるが
阪急は中間車、京王は先頭車だ(撮影:南正時)
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8000系(写真は京都線8300系)は阪急電車の
前面デザインを大きく変えた(撮影:南正時)
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8000系(8300系)は製造時期によってさまざまな
「顔」が存在する(撮影:南正時)
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京都線の特急車9300系は前照灯部分が「こぶ」
のようになったスタイルだ(撮影:南正時)
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快走する9300系特急
(撮影:南正時)
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2015~2017年に宝塚線で運行された
手塚治虫ラッピング電車(撮影:南正時)
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2014年、宝塚歌劇100周年のヘッドマークを
付けた電車(撮影:南正時)
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宝塚歌劇100周年のヘッドマーク
(撮影:南正時)
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スヌーピーとのコラボ電車。2016~17年と
2018年に運転されている(撮影:南正時)
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阪急・阪神・東急が連携して運行している
「SDGsトレイン」(撮影:南正時)
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2022年8月に運行を始めた「ミッフィー号」
(撮影:南正時)
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「ミッフィー号」は神戸・宝塚・京都の各線で
運行している(撮影:南正時)
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ライバルのJR新快速と並ぶ「ミッフィー号」
(撮影:南正時)
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運転台の横にはミッフィーのぬいぐるみ
(撮影:南正時)
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京都・宝塚・神戸線の3線同時発車
(撮影:南正時)
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京都線は上牧―大山崎間で東海道新幹線と並行する。
水無瀬駅の横を走る新幹線(撮影:南正時)
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新幹線との並行区間を走る7300系
(撮影:南正時)
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京都線の崇禅寺付近で進む高架化工事
(撮影:南正時)
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長らく阪急電車の特徴だった「よろい戸」
(撮影:南正時)
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よろい戸の影
(撮影:南正時)
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西宮北口の「ダイヤモンドクロス」モニュメント
(撮影:南正時)
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西宮北口で今津線と神戸線を結ぶ連絡線
(撮影:南正時)
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阪神大震災後の三宮駅前。「6月12日全線復旧」
の垂れ幕が見える=1995年(撮影:南正時)
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近年の話題はもっぱら2022年8月から運行を開始した、世界中で愛されるうさぎのキャラクター「ミッフィー(miffy)」とのコラボ電車。神戸線・宝塚線・京都線で各1編成のミッフィー電車が運行している(2023年3月30日まで)。大阪梅田駅では若い女性がかわゆーいとばかりにスマホでにわか「撮り鉄」となって撮影している。筆者もその中で撮影したのだが、やはり照れくさいし、筆者のような高齢者は乗るのをためらってしまう。
それにしても最近の阪急電車はイベントのヘッドマークを掲げた電車を多く見かける。これも阪急の祖小林一三翁の「私鉄沿線活性化」の伝統であろうか。
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みなみ・まさとき / Masatoki Minami
1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。
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