事故防げる?JR東「障害物検知システム」の将来性 線路上の人や車をカメラが検知して注意喚起
ゆりかもめなど無人運転の鉄道もあるが、JR東日本が目指しているのは無人運転ではなく、「ドライバレス運転」。運転士ではなく添乗員が乗車して安全確認とドアの開閉を行うというものだ。添乗員は列車の発進、停止や加減速などの操作は行わず、システムがすべて自動で行う。緊急時の列車停止もシステムが行う。日本では、東京ディズニーリゾートの各施設を結ぶ舞浜リゾートラインがこの仕組みを採用し、車内の乗務員は扉の開閉やガイド業務を行っている。
ドライバレス運転はさまざまな技術を組み合わせることで完成する。自動運転に不可欠なシステムであるATO(自動列車運転装置)の実証運転が山手線で行われており、今回の障害物検知システムも重要な構成要素だ。
各社が進める自動運転技術開発
JR九州も独自の自動運転技術を開発しており、香椎線の営業列車を使って実証実験中。運転士資格を持たない係員が乗車するという点ではJR東日本と同じだが、違うのは、JR九州の場合は乗務員が緊急停止操作を行うという点だ。乗務員は運転席に座って前方の障害物検知を目視で行うため、JR東日本のような障害物検知システムの開発は必要ない。ただ、乗務員は緊急停止などの運転に直接かかわる操作を行うため、誰でもできるというわけではなく、運転士になるためのものほどではないにせよ、必要な訓練や資格取得が必要となる。
私鉄では東武鉄道がJR東日本と協力し、2022年11月から日光線や宇都宮線を走る営業列車に障害物検知システムを仮設搭載し、検証試験を開始した。また、南海電鉄が2023年度から和歌山港線で自動運転の実証実験を行う予定。こちらはJR九州と同じく乗務員が緊急停止操作を行うことが想定されている。
メーカーも開発に積極的だ。東芝が自動運転に用いる前方検知装置を開発中。車載カメラを活用して距離を計測するとともに線路を識別して走行上の空間に支障物があるかどうかを探索するという仕組みはJR東日本と共通する(2021年10月18日付記事「地味でも年商1000億、東芝『鉄道ビジネス』の実力」)。また、日立製作所は東武と共同で検証試験を実施している。
JR東日本が構想する自動運転を実現するためには、必要なシステム開発以外にも踏切の立体交差化やホームドアの設置など、線路への人の立ち入りや自動車の侵入を防ぐインフラ設備も必要になる。実現できるのは多額の投資が可能な鉄道事業者に限られそうだ。その意味で、もし利用者の少ない路線で自動運転をする場合は、JR九州方式のほうがふさわしいかもしれない。JR東日本方式、JR九州方式のいずれも、既存の鉄道インフラを活用しながら開発を進めているため、実際には路線の実情を勘案しながらどのような方式がふさわしいかを見極めていくということになる。
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