日立、鉄道事業の立役者「副社長電撃復帰」の背景 2022年3月末に退任後、わずか9カ月で返り咲く

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日立笠戸事業所とIEP class800
日立の笠戸事業所で製造したイギリス・IEP向け車両「クラス800」=2019年7月14日(記者撮影)

2022年3月末に日立製作所の副社長を退任したアリステア・ドーマー氏が、1月1日付で副社長に復帰した。ドーマー氏はイギリス出身で1963年8月生まれの59歳。海外における日立の鉄道ビジネスを飛躍させた立役者だ。脂の乗り切った年齢でビジネスマンとしてのキャリアを終えるとは考えにくく、その去就がうわさされていた。電撃復帰の裏には何があったのか。

日立「鉄道ビジネス」の立役者

ドーマー氏はアルストム勤務を経て2003年にイギリスの現地法人、日立ヨーロッパに入社した。日立入社後のドーマー氏の歩みは、同社の海外鉄道ビジネス躍進の歴史と重なる。2005年には英仏海峡トンネルのイギリス側出口とロンドンを結ぶ高速鉄道路線「ハイスピード1(HS1)」の受注に成功。2012年にはボンバルディア、シーメンス、アルストムという「ビッグスリー」との競合の末、都市間高速鉄道車両置き換え計画(IEP)と呼ばれる大型プロジェクトの受注にこぎつけた。

さらに2015年には、世界各地で事業を展開するアンサルドブレダ、アンサルドSTSというイタリアの鉄道車両メーカーと信号メーカーを買収し、グローバル化が一気に進んだ。こうした業績が評価され、ドーマー氏は現地法人トップ、さらに日立本体の常務、専務と順調に昇格。2019年には日立本体の副社長に上り詰めた。

ドーマー氏の副社長昇格に伴い、鉄道部門のトップはイギリス現地法人で同氏と苦楽を共にしたアンドリュー・バー氏が担うことになった。ただ、鉄道に関する投資家向け説明会や重要案件の発表時にはドーマー氏が壇上に立つことが多く、対外的にはドーマー氏が鉄道事業の顔であった。

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