事故防げる?JR東「障害物検知システム」の将来性 線路上の人や車をカメラが検知して注意喚起
2023年度からは京浜東北・根岸線の営業列車にシステムを搭載して通常走行時のデータを蓄積する。営業運転ともなれば朝から晩まで運転するため、昼間、夕方、夜などの明るさや、晴れ、曇り、雨、雪など天候が異なった状態でのデータが取れる。「今まで以上にさまざまな場面に遭遇することになる。きちんと検知できるか、あるいは何もない場面で誤検知をしないか。データを積み重ねて検知機能の性能を見極めたい」と菊地所長は意気込む。
将来の実用化に向けた課題は「機器をどこまで小型化できるか」だという。データの解析は想像以上に多くの処理が必要となる。まず列車の走行にともなって発生する車両の振動による画像の“ぶれ“を除去する必要がある。画像がぶれていると障害物を正確に検知できなくなるおそれがあるためだ。大量のデータ処理を行うとなると機材は大型化せざるをえない。
データ解析装置を外部に設置して、車両との間でデータを通信すればいいのではとも思ったが、その場合、データ通信にほんのわずかだが時間がかかる。高速で走る列車はたとえゼロコンマ数秒でも数メートル移動する。リアルタイムでのデータ解析が不可欠なのだ。
実用化された際には、障害物の色が変化して映し出されるようなモニターは運転席に設置しない。狭い運転席に新たな機器を設置するスペースは少ないし、前方を見ながらモニターを確認するというのも煩わしい。ステレオカメラが障害物を検知したら、その情報を伝えてくれれば十分だ。そこで、実際の運用では障害物を検知した際に音などを発して警告することを検討しているという。
「運転支援」から自動運転へ
運転士を支援するために開発中の障害物検知システムだが、JR東日本がその先に見据えているのは運転士に代わる自動運転への活用である。
バスの運転士やトラックドライバーは厳しい労働条件から担い手が減りつつある。鉄道業界でも少子高齢化社会の急速な進行により将来、運転士が不足することが懸念されている。運転士のなり手が減れば、必要な運行ができなくなる。そのため、鉄道各社は運転士がいなくても列車の走行が可能な自動運転技術の開発を急ぐ。
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