東日本大震災を試練に日本は自信を取り戻す--英メディアが見た大震災下の日本

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 しかし、十分な量の情報がないと、人はパニックになることがある。恐怖感から、行動を起こす。実際に大きなリスクがなくても、パニックになった人がガソリンの買いだめをし、犠牲者を探すために必要なガソリンが不足してしまう。パニックで東京を離れる人が増えて、交通渋滞が起き、犠牲者を探索するための車両が渋滞につかまってしまうなど。

--日本はこれほどの大きな震災を乗り越えられるだろうか?

歴史を振り返れば、これまでに何度も日本は大きな災害を経験してきた。私の東京での体験から言えば、高齢者の心理の中には、人生はもろいものであるという概念があった。自然災害がいつかは来るのだ、と。

東京だけを例にとっても、150年間で3回、破壊されている。例えば1855年の安政の大地震、1923年の関東大震災、1945年の東京大空襲だ。日本は大きな危機を経験し、しばしば驚くべき方法でこれを切り抜けてきた。

安政の大地震は、米ペリー提督による黒船来航(1853年)からまもなくして発生した。当時、多くの日本人が地震と黒船来航がつながっていると考えた。黒船と地震のトラウマが日本人の心理に影響を与え、これが後の、文明開化を導いたと私は見ている。

1945年の東京大空襲によるトラウマは、戦後の経済の奇跡を達成するための起爆剤となったと思う。日本は、過去に非常に大きなトラウマを経験したが、がんばって、国が一丸となって生き延びてきた。

--今回の震災の場合はどうか?

発生前、日本は自信を喪失した国となっていた。経済にも、政府にも、国自身にも、国民は自信を失っていた。「失われた20年」と呼ばれる経済の不能、団塊世代が格別に多いいびつな人口分布、高齢化などの要素が意気消沈の要素となった。若者は頼りにならないと思う感情が社会に広がっていた。一方、若者たちの間には希望が消えていた。

中国が台頭し、日本の世界の位置が揺らいでいるようにも思え、日本は自信を失っていったのである。

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