「男性だらけ」靴磨きの世界に入った女性の覚悟 「全部平均点より、何か1つ飛び抜けていたい」

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靴磨きの修行中、イタリアの靴磨き用品のメーカー経由でロザリーナさんの連絡先を教えてもらい、イタリアまで駆け付けたそう(写真:Woman type編集部)

話を読み進めていくうちに、私は彼女の生き方のとりこになってしまったんです。

正直、受付事務として働く当時の私にとっては、「職人」という職業は掛け離れたものでした。

でも、確固たるポリシーを持って生きる彼女のストーリーを読んで、何か一つのものを極める仕事に憧れを抱くようになったんです。

「私もロザリーナさんのようにかっこいい女性になりたい」と思いつつ、次第に「日本でこういう仕事ができたら面白いんじゃないか」と考えるように。

そうやって少しずつ靴磨き職人になるために情報収集していくうちに、地元の名古屋で靴磨き専門店の『GAKUPLUS』を見つけました。

早速店に行ってオーナーの佐藤我久さんと会い、「ここで修行させてください」と弟子入りを申し込んだのですが、断られてしまって。

その後も何度も店に通って頼み込んだのですが、3回も断られました(笑)

あとで聞いたところによると、「すぐに辞めそうだったから」とのことでしたが、「靴磨き職人は肉体労働なので、20代の女性はすぐに体を壊してしまうだろう」という、佐藤なりの優しさだったんだと思います。

ただ、私はそれでも諦めませんでした。

もちろん靴磨き職人は全国にたくさんいます。佐藤にも「東京にはいろいろなお店があるから、俺じゃなくてそこで修行すればいい」とアドバイスをもらったこともありました。

でも、実際に東京に見に行ったお店はどこもオペレーションが完成されていて。そうではなく私は、ゼロから仕組みをつくりたいと思っていたので、どうしても佐藤に弟子入りしたかったんです。

失うことを恐れるより、前向きな気持ちを大切に

もういっそ会社を辞めれば、私の本気が伝わるだろう思って。思い切って退職したんです。

そうやって直談判すること4回目、ようやくOKしてくれました。私のねばり強さに佐藤が根負けしたんだと思います(笑)

そうして、受付事務から靴磨き職人の見習いになり、「修行」をスタートさせました。

(写真:Woman type編集部) 

その時、「安定」を手放すことに不安は感じていませんでした。というのも、当時は20代前半で、失うことを恐れるより「挑戦したい」という前向きな気持ちを大切にしたかったから。

私はもともと目標を立てるのが苦手なタイプで、これから先のキャリアプランはおろか1年後どうなっているかも分からないくらいなんです(笑)

次ページデビュー間もなく壁に直面 
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