ドイツが急転換「ウクライナへ戦闘車供与」のなぜ ロシアの侵攻から10カ月、軍事支援を一段と強化

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だが、フランスが軽戦車の供与を決定したことで、ドイツも「供与しない理由がなくなった」とドイツ公共TVのZDFは指摘した。マクロン氏の決断で「タブーが破られた」ともドイツの専門家は指摘した。

ドイツはこれまでも間接的ではあるが、ウクライナがスロバキア、チェコ共和国、スロベニア、ギリシャから旧ソ連の戦車を受け取り、その後、より近代的なドイツの装備を受け取る取引には参加していた。ソ連製戦車は訓練の必要がないうえに、ドイツ製の戦車や歩兵戦闘車を提供することによって、ロシアをいら立たせることも避けられたからだった。

ウクライナは紛争開始当初から、戦車や空からの攻撃に対処するため防空圏を守る戦闘機の供与や軍艦の供与を今も期待しており、軽戦車や歩兵戦闘車の供与は第1段階にすぎない。

今年1月、アメリカが表明した約30億ドルの支援パッケージには、50台のブラッドレー戦闘車両だけでなく、自走榴弾砲、地雷耐性車両、GMLRS精密ロケットも含まれることが予想される。

一方、ドイツはマルダー歩兵戦闘車約40台とパトリオット対空ミサイルシステムを供与。8週間のウクライナ兵の訓練期間を経て、3月末にはウクライナに配備される予定だ。タイヤ仕様の全地形型のフランス製AMX-10RCの供与で機動性、生存性、スピード性を備えた3種類の装甲戦闘車両が配備されることになり、ウクライナの防衛能力は飛躍的に高まることが予想される。

ドイツのマルダー歩兵戦闘車は、1970年代からドイツ軍で使用されており、改良が繰り返され、最新のモデルでは兵士が夜間赤外線カメラで車両を動かせる。大砲の射程は、1500mの範囲でヘリコプターや戦車を攻撃できる。ドイツ軍は老朽化した在庫を現在、プーマ歩兵戦闘車に置き換えているが、マルダーは約370台保有している。

対ロシア外交を大きく方向転換

ドイツ軍は防衛予算を長年抑えてきたことから、保有する兵器の老朽化が深刻で、ウクライナに供与することで自国防衛の装備の不足も懸念されている。だが、ドイツ議会は今回、ウクライナへの歩兵戦闘車の供与をほぼ満場一致で支持した。ドイツ連邦議会の防衛委員会のツィンマーマン委員長は「非常に遅いが、遅すぎるわけではない」と述べた。ベアボック外相も「ウクライナ政府への支援が弱まることは、ロシアのプーチン大統領に対して侵攻の継続を促すことにつながる」と関係国の支援を呼びかけた。

ドイツは東西冷戦期の1970年代、旧ソ連邦との宥和策として「東方外交」を展開し、ドイツ系住民が多く住むソ連との急速な経済接近を行い、天然ガスの購入などで関係を築いてきた。

その関係はメルケル前政権にも受け継がれたが、ロシアのウクライナ侵攻以降、天然ガスがプーチン氏の兵器のように使われ、東方外交は完全に挫折し、昨年は戦後最大の対ロシア外交の方向転換を迫られた年になった。

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