この活動により、「みんなが運命共同体だ」という意識が社内で生まれた。「幹部チームの全員と上層部のかなりの割合が会話に参加しました」と、ミルスタムは当時、私に語った。たとえば、事務職の社員がリアルタイムでCEOと直接話したり、インドで働くソフトウェア開発者がドイツの顧客対応担当者と長時間意見交換したりすることができた。
社員の生産性を高めるための4つの課題
こうしたコ・クリエーションはどのように役立ったのか。ミルスタムと私は、この点について議論を重ねてきた。ミルスタムが指摘するのは、「周辺視野」を広げる効果があったという点だ。
自分の周囲の人以外の声が、耳に届くようになった。ほかの人たちの言葉をじっくり聞くことにより、人々はその人たちの状況をより深く理解し、その人たちの立場に立ってものを考えられるようになったのである。
「社員が互いの話を聞き、自分の経験を語ることにより、共感の精神が育まれました」と、ミルスタムは述べている。
この活動で重要な意味をもった要素のひとつは、ファシリテーターが多くの人たちに発言を促したことだった。「もう少し意見を聞かせてくれませんか」とか、「興味深い話ですね。その方法がどのようにうまくいったのか、具体例はありますか」などと水を向け、発言の背中を押したのである。そのおかげで、人々は自分の意見を述べる勇気を持つことができた。
また、ファシリテーターたちは、参加者同士の新しい出会いをつくり出すようにも努めた。「ほかの国の拠点(やほかの事業部など)に、この問題を話している人がいます。紹介させてください」などと言って、同様のテーマを話題にしている人たちを結びつけたのだ。
HSMアドバイザリーのグレアム・オクスリーとハリエット・モリノーに、その経験を通じて得られた教訓について尋ねたところ、2人が挙げたのは次の4つの点だった。
第1は、リーダーによる支援が欠かせないということ。
第2は、膨大な数の社員を対話に参加させることが、途方もなく難しいコミュニケーションとエンゲージメントの課題だということ。
第3は、話し合われた内容を定性的に分析する際、人間と機械を併用するのが最善だということ。
第4は、上層部が社員に意見を求める以上、寄せられた意見に基づいて行動すべきだということ。
コ・クリエーションのプロセスは、さまざまな面で新しい働き方に関する社内の人たちの考え方を形づくった。仕事のあり方を根本からデザインし直せば、すべての社員に影響が及ぶ。その取り組みにより、社員の生産性が高まるようにすべきだ。
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