中国人不在「日本の観光業復活のカギ」はペットだ インバウンド不調の穴を埋める存在になる

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人数では中国からの観光客が最も多いという事実は否定できない。しかし、1人当たりの支出がそれほど多くない中国人観光客をどれだけ呼んだところで、日本にもたらす経済効果はたかが知れている。

中国人が日本に来て電化製品や、単価の安いものを買っていくが、じつのところそれらはメイド・イン・チャイナが多い。中国から輸入している日本メーカーのものを日本製といって買って帰るだけで、日本の産業にはほとんど寄与しない。

しかも商品の購入先がシンガポール資本のラオックスだったりする。宿泊するホテルや観光バス会社も中国資本の可能性は高く、それでは日本の観光業が強くなれるはずがない。

ペットと泊まれるホテルはなぜ人気なのか

コロナ禍が収まり外国人旅行者が戻りつつある一方で、日本人の観光客も各観光地に戻ってきている。世界的に不安定な状況で、しかも円安ということで海外旅行が難しくなった今だからこそ、国内観光が見直されている。そのトレンドをとらえずにインバウンドにしがみついている企業は淘汰されるしかない。

ちなみに、今後伸びてきそうなのは熱海だ。

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熱海にはペットも宿泊できる旅館がいくつかある。筆者が利用した際は、ペット連れの家族でいっぱいだった。玄関に飼い犬の名が書かれた立て札がかかっていたり、犬用のタオルが用意されていたりと、人間だけでなくペットがくつろげる環境を整えてくれている。それこそが日本が世界に誇る「おもてなし」であり、独自の魅力を特化させていけば新たなニーズも開拓できる。

今ではペット同伴ホテルのような一風変わった宿泊施設は満室になることが多いほど人気になっている。

JR東日本は2022年5月に犬と乗れる新幹線の実証実験を行なった。現在のルールではペットケースに入れなければならないが、実験では特定の車両のみ犬をケースから出せるというもの。犬も長時間、ケースに入れられるストレスから解放されるため、飼い主にはたまらないサービスだ。

ペット産業の市場が大きくなっているという背景もあり、これからいっそう観光業には高付加価値のサービスが求められる。観光業は、外的要因により来るかどうか読めない観光者を当てにするより、特定のサービスに期待する国内の観光客を狙うべきではないだろうか。

渡邉 哲也 作家、経済評論家

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わたなべ てつや / Tetsuya Watanabe

1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年、『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告しベストセラーになる。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行なっている。『「お金」と「経済」の法則は歴史から学べ!』(PHP研究所)のほか、『パナマ文書』『ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0』(以上、徳間書店)、『貧者の一票』(扶桑社)、『メディアの敗北』(ワック)など著書多数。最新著は、『「米中関係」が決める5年後の日本経済』(PHP新書)。

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