萩生田氏を交代できない岸田首相「弱腰人事」の訳 復興相と総務政務官の交代のみ、政権は機能不全

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1月下旬には通常国会が召集され、野党との長い論戦が始まる。閣僚のスキャンダルはさておいても、安全保障政策の転換と防衛費の倍増、原子力発電所の新増設・建て替えを認める方針変更、さらに子ども関連予算の増額など重要な政策課題をめぐる厳しい議論が待っている。岸田首相は子ども関連予算の倍増を掲げており、これにも数兆円の財源が必要と見られている。

自民党内では早くも「消費税率アップしか道はない」との声が出ている。防衛費の増額で余剰金などはかき集めてしまったし、国債の発行ももはや限界だというわけだ。

しかし、消費税増税となれば、保守派議員の大反発は必至だ。安倍派の中堅議員は早くも岸田首相を強く威嚇する。

「岸田さんは大した覚悟もないのに財務省の言いなりになっていると、完全に自分の首を絞めますよ。高市大臣はいつでも進退をかけて戦うと言っていますしね」

波乱含みの通常国会に踏み出すのにどういう態勢が必要なのか、年末年始の岸田首相の判断に大きな関心が集まった。

内閣改造に踏み切らなかった理由

しかし、岸田首相は萩生田政調会長や高市経済安保相の交代には踏み切らなかった。また官房長官や首相秘書官などのチーム岸田にも手を入れなかった。この判断について岸田派幹部が内情を吐露する。

「今、ガタガタすると傷口が広がってしまう。それに安倍派を敵に回すと、二階俊博前幹事長や菅義偉前首相と『とりあえず岸田を変えよう』と結託される可能性がある。今は我慢するしかない。岸田派は何といっても第4派閥なんだ」

さらに政権を支える麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長が、内閣改造するなら大義名分として国民民主党との連立に乗り出すべきだとの考えを持っていたが、調整がつかなかったことも、岸田首相が大きく動かなかった要因の1つだ。

自民党幹部の1人は「連立には国民民主党が抱える労働組合が丸ごとついてこないと意味がない。そこの交渉が難しい」と話す。岸田首相は公明党への配慮もあって慎重姿勢を崩さず、国民民主党の玉木代表は「僕らは官邸には嫌われているからね」と周辺に語った。

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