「2023年日経平均3万円回復」が無理筋でない理由 日本株の先行きが明るいと言える有力指標は?

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いうまでもなく、資源価格が反転上昇すれば、インフレ率は再加速する公算が大きい。FRBが12月に示した物価見通しによれば、2023年(10~12月時点の前年比)はプラス3.1%、2024年はプラス2.5%とされている。

もしこの見通しが修正を迫られるようだと、2023年に約2回(0.5%)の利下げを織り込む現在の市場参加者の見通しも同時に修正を迫られるだろう。5.00~5.25%のFF金利が2023年を通じて据え置かれるとしたら、それはアメリカ株にネガティブな影響を与える可能性は高い。

では、中国経済再開が日本株に与える影響はどうだろうか。筆者は日本株に先行性を有する中国のクレジットインパルスに注目している。この指標は国内の新規貸し出し(の名目GDP比)がどれくらい伸びたかを示すもので、いうなれば、同国の実体経済の強さをお金の総量から逆算するものである。

上向きのクレジットインパルスが持つ意味

実のところ、この尺度で見た中国経済は、GDPなどマクロ指標が示す弱さとは裏腹に、上向き基調にある。これは当局の金融緩和(預金準備率の引き下げ、事実上の政策金利に位置づけられているローンプライムレートの引き下げ)が奏功し、銀行の貸し出し態度が緩み(融資基準が緩和)、経済に供給されるお金が増加していることを意味している。

上向きのクレジットインパルスは、今後ゼロコロナ政策の修正によって経済活動が本格的に正常化する際、その勢いが市場参加者の想定を上回る可能性を示唆しているように思える。過去、中国のクレジットインパルスが日本株に対して半年から1年程度の先行性を有してきた経緯を踏まえれば、2023年中に日経平均株価が3万円を回復するとの予想に違和感はない。

中国経済回復が引き起こすインフレ再加速とそれに伴うFRBの金融引き締め長期化によって、アメリカ株の下落に巻き込まれる可能性は残る。だがそれでも日本株は、中国経済による直接的な恩恵を受けやすいことを踏まえると、2023年もアメリカ株対比で底堅い展開が期待できると筆者は予想する。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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