「マスコミ取材」広報がうまく立ち回るための秘策 プレスリリースと記事との「差分」を読み解く

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事実(取材に基づく)は、文章の最後を「~した。」「〜だ。」「〜する。」「〜なっている。」のような、断定表現で締めている場合が一般的です。事実を語った文章は、文中の主語と述語が明確に示されているので、わかりやすいのも特徴です。

記事中で断定表現で発信されている情報は、「その媒体が事実だと考えて」出しています。特に注目したいのは、数字やいつどこで誰が何を行ったかという事象です。これに加えて、取材対応者のコメントは信頼度の高い事実として扱われます。

一方、記者や媒体側の考えや推測について書かれた文章は、締めに「〜注目したい。」「〜期待したい。」「〜だろう。」「〜といえよう。」「〜今後の対応が求められている。」といった表現が使用され、主語が曖昧な場合もあるでしょう。

広報を担当していない企業の記事を読むとき、一つひとつの文章をタテ・ヨコ・ナナメから観察して、どこから見ても事実である情報を見つけ出すのは楽しい作業です。ここから逆算して取材対応者が話す内容を構成すると、いい記事になることは間違いないでしょう。もちろん広報のスキルアップに大変役立ちます。

プレスリリースと記事との差分を読み解く

こうした読み方は、取材対応の情報インプット用としてだけでなく、会社のプレスリリースを基に書かれた記事をチェックする場合にも使えます。

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会社が公式に出した「客観的事実」に対し、各媒体がどのような味付けをしているのか、媒体側の独自の意見が加えられているのかなど、プレスリリースとの差分から媒体や書き手の方向性を把握できます。

広報担当者は媒体概要や特集の方向性に加えて、「事実(客観的事実を含む)」が多めの記事を書いている媒体なのか、「記者や媒体の考えや推測」が多めの記事を書く記者なのか、などを取材対象者に伝えておくといいでしょう。

すべての記事やニュースの情報を、客観的事実と推測や意見に分けるのは至難の業です。しかし、少なくとも自分が働く業界のニュースは、そうした視点を持って読んでおくと、どのような取材であっても記事に対する「期待と現実とのギャップ」を最小限に抑えられると思います。

遠藤 眞代 Doen代表取締役、広報コンサルタント

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えんどう まさよ / Masayo Endo

1993年ソニー(現ソニーグループ)入社、商品企画・渉外を経験した後、一貫して広報業務に従事。2013年フリーランスの広報パーソンとして独立。2018年Doen設立、広報業務の受託や広報コンサルティング、広報研修等を、大企業からスタートアップ企業まで幅広く対応中。日本外国人特派員協会会員。

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