日銀「事実上の利上げ」の先に待つ4つのシナリオ 「金利なき世界」から金利のある未来へと転換
30年ぶりに「1ドル=151円」まで円安が進んだ今年の為替変動も、日銀だけが世界の趨勢に逆らって金融緩和を続けたことが要因と見られている。
短期的には金利の上昇=円高となり、場合によっては円高が進むこともありうる。しかし長い目で見たとき、ヘッジファンドなどが金利や為替の先物などを使って、市場の歪みに懸けてくる。円安を誘導し、国債金利の引き上げを狙うわけだ。日銀のバランスシートは徐々に悪化し、円は売られる展開になる。短期的には超円高、長期的には超円安のシナリオがありうる。
今後は、日本国債の格付けが下落するリスクにもさらされる。国債の格付けが下落すれば日本企業の格付けも下落し、海外で外貨を調達する際に金利が高くなるなどの不利益を受ける。国債の格下げが海外で活動する日本企業の成長を阻害することになる。しかも、現在の日本国債の格付けは「シングルA+(S&P、長期発行体)」。Aランク陥落も視野に入ってきた。
金利が上がれば株価は下落する。リスクのない預金などにマネーが回避するからだ。そこに加えて、日銀はこれまで「ETF(上場投資信託)」を通じて日本の株価を買い支えてきた。アメリカなどの株価は3割程度下落しているが、日本だけは超低金利だったこともあって株価は下落してこなかった。その背後には、日銀がいたわけだ。
しかし、アベノミクスが終了し金融緩和から金融引き締めへとシフトすれば、このETF=株式も売却していくことになる可能性は高い。実際に、最近は株式の「売り越し」が目立ってきた。金利上昇は株価を下落させるが、日銀がその下落をさらに推し進める存在になるかもしれない。
「日本」の信用が生命線
いずれにしても、日本政府が財政規律を守り、財政再建の姿勢を示さなければ、日本は再び円安が進み、悪性のインフレに見舞われることになる。最近も、イギリスが安易に財源なき予算を拡大したことで、イギリス・ポンドが売られて、就任したばかりの首相が交代に追い込まれた。岸田政権にも財政再建の道筋を示す姿勢が求められる。
防衛費の膨張によって来年度の予算案は総額で114兆円となり、史上最大の歳出がまた求められる。その半分以上は国債発行に頼らざるを得ず、財政ファイナンスへの道につながっている。
日銀は、アメリカが戦費調達のために実施した“切り札”ともいえるYCCの手法を、すでにデフレ脱却のために使ってしまった。次の手はあるのか。経済は信用で成り立っている。国家を崩壊させないために、信用を守ることが生命線だ。
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