日銀「事実上の利上げ」の先に待つ4つのシナリオ 「金利なき世界」から金利のある未来へと転換

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岸田政権は、おそらくこのままアベノミクスを継続せず、金融緩和を中止する総裁を選ぶことになるのではないか、と筆者は見ている。早ければ次の新しい日銀総裁が決まった途端に、アベノミクス終焉となる可能性もあるだろう。場合によっては、新総裁就任と同時にYCCは中止になるかもしれない。

金利のある世界とはどんな世界なのか?

FRBのYCCは、第2次世界大戦という非常時の安定的な資金調達、そして戦後の国債価格管理のための政策だったのに対して、日銀のYCCはあくまでも「デフレ脱却」のためのものだ。日銀のYCCが適切な手法だったのかは、今後検証されることになるはずだ。日銀のYCC終了後、ざっと次のようなシナリオが考えられる。

(1)金利上昇、債券価格の下落

YCCを廃止して政策金利を引き上げると、金利が大きく上昇することは避けられない。インフレ次第だが、2~3%上昇する可能性もある。その場合、すでに発行されている国債(既発債)の価格は下落することになる。日本銀行も含めて、債券を多く抱える銀行や保険会社、そして年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人など、さまざまな運用機関や基金は会計上の含み損を出すことになる。実際に、日銀は2022年4~9月期決算で、保有する国債の含み損が8749億円になったと発表している。

日銀や銀行は、途中で国債を売却せずに償還日まで保有し続けるから問題ないという姿勢だが、帳簿上はずっと含み損を抱えるために、決算の悪化は避けられない。企業は株価に影響が出て、日銀はバランスシートが悪化して信頼度が悪化する。日銀が発行する「日本銀行券=円」が慢性的に下落することになる。企業も資金調達が難しくなり、景気後退につながりかねない。

さらに、住宅ローンを返済中の個人、借り入れを抱える企業にも大きな影響が出てくる。変動金利で住宅ローンを抱えている人は金利の上昇でローンの返済金が増える、もしくは返済期間が長くなる可能性が出てきた。そうなれば不動産市場に影響が出る。これまで政府の救済措置などで生き残ってきたゾンビ企業も、一斉に破産するというシナリオが浮上する。

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