日銀「事実上の利上げ」の先に待つ4つのシナリオ 「金利なき世界」から金利のある未来へと転換

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

いずれにしても、「日銀が金利を上げても、すぐにまた金利が高くなるだろう」というイメージが定着してしまう可能性が高い。「金利上昇=債券価格が下がる」とわかっている債券を買う投資家はいない。結局、国債を買うのは日銀だけになってしまい、日銀が財政ファイナンスをやるしか、政府は債券を発行できなくなってしまう。政府が国債を発行できなければ、予算が使えずに、政府機関が閉鎖され、公務員や国会議員にも賃金が支払われなくなる。

黒田総裁は「財政ファイナンスではない」と主張するが、その言葉をそのまま鵜呑みにする市場関係者は少数派になりつつある。FRBが国債価格の暴落を恐れて中止にしたYCCを、日銀は今後も続けていかざるをえない。未来に控えている日本の悲劇ともいえるが、その結果がどうなるのか……。そろそろきちんとしたシミュレーションをしておく必要があるだろう。

日銀なしでは国債が発行できない?

1951年にYCCをやめたときに、FRBは財務省と金融政策について協議し、共同声明を発表している。いわゆる「アコード」と呼ばれるものだが、日銀も最終的には政府との間で共同声明を出してアベノミクスを終了させ、「金融緩和の中止」→「金融引き締めへの転換表明」→「金利引き上げ」、といったプロセスになるはずだ。もともとアベノミクスは、財務省と日銀との間で「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策提携について」という共同声明を出すところからスタートしている。

はっきりしているのは、今後は日本国民全員がアベノミクスによって膨らんだ国債残高を、何らかの方法で返済もしくは処理しなければならないということだ。「日本政府は日銀なしでは国債の発行ができなくなりつつある」という現実は、極めて重い。

FRBがYCCを廃止したことで学んだことは「金融政策は政府から独立した機関が担うことが適切である」という貴重な教訓だったとされている。「日本銀行は政府の下請け」といった間違った考えを持った日本のトップが、日本政府を機能不全に陥らせる状況を作ってしまった、と言っても過言ではないだろう。

次ページ岸田政権はアベノミクスをどうするか?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事