とんでもない」の構造は、例えば「少ない」や「もったいない」と同じです。「少ない」「もったいない」の“ない”は、「ある・ない」の“ない”ではありませんので、「少ある(すくある)」とは言いませんし「もったいある」とも言いません。ましてや「少ございません」「もったいございません」なんて、聞いたことがありませんね。
ですから本来は「とんでもありません」「とんでもございません」という言葉は存在してはならないものでした。
「とんでもございません」は元々誤用だった
「でした」と過去形にしたのには理由があります。
「とんでもございません」という誤用表現があまりにも一般的に広まったために、2007年2月の文化庁文化審議会による敬語の指針で、「相手からの褒め言葉に対して謙遜しながら軽く打ち消す表現として『とんでもありません』『とんでもございません』を使っても問題ない」と答申されたのです。
つまり、文法的には誤っているものの、今では「とんでもございません」は間違いではないと認められています。言葉は時代とともに変化していくもの。褒められたときに恐縮してとっさに出る謙遜の言葉として「とんでもございません」を、どうぞ安心して使ってください。
とはいえ、過渡期には新しい基準を容認できない人も少なくありません。情報をアップデートできていないマナー講師などはいまだに「とんでもございません」と言ってはいけない、と厳しく指摘するかと思います。そんなときは、「とんでもございません」という表現は、本来は間違いなんだな、と認識しつつ、この講師は15年以上も情報を更新していないんだなと心の中で思って、あたたかく見守ってあげてください。
「とんでもございません」と同様にマナー講師がよく槍玉に挙げる表現に「過去形での質問」があります。
「お二人様でよろしかったでしょうか」
「禁煙席でよろしかったでしょうか」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」
こういった言い方に嫌悪感を抱く人もいます。ただ、この「よろしかったでしょうか」も、もしかしたら時代の流れとともに認められる方向にあるのかもしれないとは感じています。
その理由は、過去形での表現が、婉曲表現として容認される傾向にあるからです。
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