"コイン投げ"の方程式でわかる「あなたの寿命」 理論物理学者が「病は気から」を科学的に検証
たとえば、自作自演のプラネタリウム公演とか、素人ではありますが、ピアノやパイプオルガン演奏のコンサート、第二東名高速道路開通の暁には、使い古した愛車で完走する、などなどです。
仏教の「諸行無常」を引き合いに出すまでもなく、原子分子レベルから日常まで、すべてはゆらぎ、変転しています。しかも、孤立した個は存在せず、他との関連において存在しています。「諸法無我」、縁起の理法、素粒子の場の理論です。数学的にも、半分しか見えていない未来に夢を託して生きてみるのも、ひとつのいい生き方かもしれません。
“コイン投げ”に学ぶ「長生きの方程式」
コインを無作為に投げると、表が出るか裏が出るか、2通りの場合がありますが、 表が出る場合は1通りです。投げる回数が多ければ、その半分は表が出ることが予想されます。起こりうるすべての場合がn通りあって、それらが同じたしからしさで起こるとしたとき、そのなかのある事柄が起こる場合がm通りあれば、それが起こる確率はm/nであるといいます。
コイン投げの場合、表が出る確率は、表か裏の2通りのなかの1通りですから1/2です。次に、コインを2回投げて、表表と続いて出る確率は、表表、表裏、裏表、裏裏の4通りのなかの1回ですから1/4です。
ここで、 1/4は(1/2)×(1/2)ですから、1回目に表、2回目に表が出る確率1/2の掛け算になっています。互いに無関係に起こる出来事が連続して起こる確率は、それぞれの出来事が起こる確率の積になるのです。
ところで、厚生労働省が発表している令和2年簡易生命表によれば、男性が0歳から65歳まで生きる確率p(0〜65)は0.897、90歳まで生きる確率p(0〜90)は0.284だとされています。
ここで、0歳から90歳まで生きるということは、65歳まで生きて、それからさらに90歳まで生きるということですから、65歳から90歳まで生きる確率をp(65〜90)と書けば、
p(0~90)=p(0~65)×p(65~90)
この関係から
p(65~90)=p(0~90)÷p(0~65)
がえられます。そこで、先ほどの数値を入れると、p(65~90)=0.284÷0.897=0.317になり、これは、なんと0歳から90歳まで生きる確率p(0~90)=0.284よりも大きくなっています。65歳まで生きてしまえば、30%の確率で90歳まで生きられるということです。
女性の場合も同様で、生きる確率をqと書けば、生命表には、q(0~90)=0.525、q(0~65)=0.946と記されていますから、65歳から90歳まで生きる確率は、q(65~90)=0.525÷0.946=0.555となり、0歳から90歳まで生きる確率q(0~90)=0.525よりも大きく、60%近い確率で90歳まで生きられるということになります。
長生きの条件は、一日一日を確実に生き切るという実績を重ねることなのです。これは、私たち人間が、自らの有限性、つまり終焉があることを知っている唯一の生物であるからこそ、「今」という一瞬を大切に生きなければならないと考える理由とも重なります。
長生きだけが幸せの条件であるとは言い切れませんが、生きている時間が多いほど、幸せと出会う確率が大きくなることは明白でしょう。数学が教えてくれる未来への希望です。
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