「岸田首相はすでに腹をくくった」と言える理由 23年前半の岸田内閣の前途と日銀人事を考える

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先に2人の副総裁を決めて、後から総裁を決めるというのも変な話である。総裁と副総裁の任期がずれているのは、2008年に白川方明総裁がハプニング的に決まった名残りなのだが、どうせなら正副総裁3人をセットで決めて、3月20日から新体制でスタートするほうが合理的であろう。ただしその場合は、国会同意人事がスムーズなものである必要がある。

次期総裁が巷間言われているように、雨宮正佳副総裁なのか、中曾宏元副総裁なのか、あるいはそれ以外のサプライズ人事なのか、もちろん筆者にはわからない。ただし「政治とは日程なり」である。上記のような日程を考えた場合、官邸と財務省と日銀の間で、「ポスト黒田体制」に関するコンセンサス作りが始まっていないとは考えにくいのである。当然のことながら、そこでは「黒田路線の軌道修正」も語られているはずである。

12月20日、日銀はYCC(イールド・カーブ・コントロール)における長期金利の変動幅を、0.25%から0.5%に拡大することを決定した。この「クリスマス逆プレゼント」に市場は動揺し、今週は株安と円高が進んだ。

この決定に対し、官邸は「寝耳に水」であったと伝えられている。それはそうだろう。でないと株安の責任を押し付けられてしまうからね。でも、本当に「聞いてないよ!」だったはずがないと思うのだ。

「悪いけど、アベノミクスはやめちゃうよ」

岸田さんの立場になってみると、「ポスト黒田」を決めるにあたって、安倍さんと相談することはもはや不可能である。そして自民党という楕円形の「右の焦点」は、いまだにピンボケのままである。回復を待っているわけにもいかず、その間は「左の焦点」である岸田さんがどんどん物事を捌いていかなければならない。

12月、「防衛増税」の論議で永田町は大いに沸いた。萩生田光一政調会長、高市早苗経済安保担当相、西村康稔経済産業相など、安倍派の議員はこぞって増税反対を叫んだが、何が何でも反対というほどではなかった。安倍さんの死からすでに半年、岸田さんは静かに腹をくくっているのではないだろうか。

「安倍さん、悪いけど、アベノミクスはやめちゃうよ」

相談相手の居ない悲哀を感じつつ、総理執務室でそんなふうにつぶやいているのではないかと思うのである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページさて競馬コーナー。2022年も有馬記念がやって来た!
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