「サービス残業肯定論」は1ミリも通用しない 不払い分は退職後でもきっちり請求しよう
「労働基準法は、一日8時間または週40時間を超えて労働者を働かせた場合、残業代(割増賃金)を支払わなければならないと定めています(労基法37条)。このルールは『強行法規』と言われ、当事者の合意にかかわらず、適用されます。もし労働者と会社側が、これに反する合意をしていたとしても、無効となります(労基法13条)」
労働者が「サービス残業」に同意していた場合でも、同様なのだろうか。
「はい。たとえば今回のケースで、上司が部下の『説得』に成功して、部下がサービス残業を受け入れたとしても、法的には何の意味もありません。
さらにいうと、残業代の不払いは、刑事罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)まである『犯罪行為』です。したがって、サービス残業を強いられていて、会社に改善を要求しても改まりそうにない場合は、労働基準監督署に申告して調査してもらいましょう」
ただ、正当な要求だとしても、「会社で波風を立てたくない」という労働者もいるはずだ。そうした人は、どうすればよいだろう。
3つの理論は「説得力がない」
「在職中は黙々とサービス残業に耐えながら、パソコンのログやファイル更新時刻等、日々の始業・終業時刻に関する客観的証拠を確保しておき、退職後に残業代を会社に請求するやり方があります。
サービス残業の時間を立証するための客観的証拠が十分にあれば、裁判になっても負ける可能性は低く、年14.6%の高率の遅延損害金もつきます。残業代と同額の付加金(ペナルティ)まで認められる余地がありますので、まさに『倍返し』が期待できます」
結局、この「3つの理論」をどう見ればよいだろう。
「このように、サービス残業はれっきとした法律問題ですから、(1)『仕事はやりがい』理論のように、精神論にすりかえることはできません。
また、労働者の業務量や業務内容をコントロールする義務は、会社にあります。(2)『残業が発生するのは仕事が遅いからだ理論』も、法的には認められません。
最後に、能力評価は、あくまでも所定労働時間をベースにした生産性で行うべきです。サービス残業を行ったこと自体や、それによって獲得した成果を高く評価するのは、客観的に公平な評価基準といえません。そうすると、(3)『カネは後からついてくる理論』も説得力はありません」
光永弁護士はこのように述べていた。
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