32歳「スキルス胃がん」の母親が娘に宛てた手紙 iPadには「退院したらやりたいことリスト」

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〈こんなのつくったよ〉

スマートフォンで写真を撮り、みどりさんに送った。

〈おいしそうだね。ウィンナーに切れ目まで入れて。2人もきっと喜ぶよ〉

みどりさんからはすぐに、そんなメッセージが返ってきた。エンジニアとしてのこうめいさんの仕事は、主に工場の生産ラインを調整する業務で、現場に立てないことには不自由も感じた。

関係部署に事情を説明し、職場の同僚に申し送りをして、在宅勤務の際は、オンライン会議システム「スカイプ」を使い、現場の様子をなるべく正確に聞き取るようにした。新型コロナが流行する前のこの時期、在宅勤務はまだ一般的ではなかったが、職場はこうめいさんの働き方に理解を示してくれた。

4歳の双子の娘、もっちゃん、こっちゃんはしばしば、埼玉県のみどりさんの実家で週末を過ごした。父のりあきさんが、クルマでよく迎えに来てくれた。

実家で母えつこさんが仏壇にお線香をあげると、2人も仏壇の前に座り、手を合わせた。

そして、
「ママがはやくよくなりますように」
「ママといっしょに、ごはんがたべられるようになりますように」
とお願いをした。

まだ4歳なのに、ちゃんとわかっているんだ。えつこさんはびっくりした。みどりさんは、改めて病気について宣告された直後は、さすがに動揺した様子だったが、こうめいさんやえつこさんの前で泣くようなことはなかった。

つらいなら、がまんせずに泣いてくれたほうが、気持ちが楽になるはず。むしろ、もっと泣いてくれたらいいのに。えつこさんはそう思っていた。

双子の娘への手書きのメッセージ

10月23日。病室でみどりさんは、もっちゃん、こっちゃんにあて、小型の便箋に手書きのメッセージを書き、こうめいさんに託した。

もっちゃんへ
おうたをうたったり
だんすをするのが
じょうずですね
いっぱい
みせてね
こっちゃんへ
いろんなぽーずをしたり
かけっこや
のぼるのが
じょうずですね
いっぱい
みせてね

こうめいさんが渡したiPadで、2人の動画を見ての感想だった。

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