2023年政局「反撃」高市氏vs「存在感」稲田氏の行方 ダークホースは青木氏の秘蔵っ子「女性議員」

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岸田首相が反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など、防衛力を強化する財源を確保するための増税方針を発表したのは12月8日のこと。

高市氏は2日後にツイッターで、政府与党連絡会議に高市氏と西村氏が呼ばれなかったことを暴露し、「その席で総理から突然の増税発言。反論の場も無いのかと、驚きました」と怒りをぶちまけた。

そのうえで、「賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解できません」とまで記した。

現職の閣僚による首相への批判は、通常なら、高市氏本人が語るように「罷免されても仕方がない」反逆行為である。その高市氏は、12月12日、総理との懇親会に出て、翌13日にはわだかまりは解けたと記者会見で述べたが、「私は間違ったことは言っていません」と付け加えた。勝負どころが近づいていると踏んでの首相批判……「戦火は収まらず」である。

高市氏は、昨年秋の自民党総裁選に、信条をともにする安倍元首相に担がれて出馬した。結果は3位だったが、安倍氏の岩盤支持層である保守層からは支持され、「安倍氏の後継」としての立場を固めることには成功した。

ただ、今年7月、奈良で安倍氏が銃撃されて急逝したことで、高市氏は自民党内で唯一の後ろ盾を失った。安倍氏に近いとはいえ、無派閥の高市氏にとっては大打撃で、2021年の自民党総裁選挙で高市氏を支持した安倍派議員も、萩生田氏、西村氏、それに松野博一官房長官、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長がお互いを牽制し合うなか、雲散霧消してしまった。

しかし、高市氏に目がないわけではない。岸田首相が「防衛増税」を打ち出し、防衛費の増額を声高に訴えてきた安倍派からも反対論が噴出した事実は、無派閥で確固たる支持基盤を持たない高市氏には追い風と映ったはずだ。

「今、安倍派は、森さんがどうにかまとめていますが、バラバラの状態が続いています。それこそ分裂したりしたら、『萩生田さんでも西村さんでもなく高市さんを担ごう』という人たちは当然出てくるでしょうね」(菅グループ中堅議員)

もともと高市氏は今年8月、政調会長から経済安保相へ横滑りした際、「優秀な小林鷹之大臣に留任してほしかった」と語っていたほどだ。大臣引き継ぎを取りやめ、内閣府職員への訓示もしなかったときから、岸田首相とは一線を画していたのだ。その点でいえば、自身を岸田首相の対極として位置づけるため、岸田首相から罷免されていたほうが好都合だったかもしれない。

「再び表舞台へ布石」稲田氏

高市氏が公然と岸田首相に反旗を翻すなか、存在感を見せているのが稲田氏である。

稲田氏は12月12日、首相官邸で報道陣に囲まれ、防衛財源について、「安定財源である必要がある。1兆円について国民に薄く広く、税の負担のお願いを検討する首相の方針は正しいと思う」と語った。これは岸田首相の判断を肯定し、高市氏の考えに反論したものだ。

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