「Uber Eats配達員」に接触されたらどうする? 自転車事故で「高額賠償」となるケースもある

拡大
縮小

ウーバーは、ウーバーイーツ配達員を、自社と雇用関係がなくかつ独立した個人事業主として自由な裁量で仕事をしている立場と位置付けており、自社は民法715条に基づく使用者責任を負わないというスタンスを取っています。そのため、ウーバーは原則として配達員が起こした事故につき賠償に応じない状況になっています。この記事執筆の時点で、ウーバーイーツ配達員が起こした事故につきウーバーの使用者責任を認めた裁判例は見当たりません。

ですが、ウーバーイーツ配達員の自転車に追突され負傷したとして、2020年8月に会社役員の女性が配達員とウーバーに250万円の損害賠償請求訴訟を起こした事件について、2022年9月30日、ウーバーと配達員が連帯して140万円を支払うという裁判上の和解が成立したと報道されました。

この和解には口外禁止条項が付されており、和解に至った経緯は明らかになっていません。ですが、ウーバーが配達員の起こした事故に関して金銭支払に応じるのは異例のことであり、今後、ウーバーイーツ配達員が起こした事故に対するウーバーのスタンスが変わっていく可能性はあります。

配達員から損害を全額賠償してもらえる?

ウーバーのスタンスが今後変わる可能性はあるものの、現時点ではウーバーイーツの配達員の不注意(過失)により配達員が運転する自転車にぶつかられたときの賠償責任は配達員が負う、となると、配達員から損害を全額賠償してもらえるのか?という点が心配になりますよね。

この点、ウーバーイーツ配達員は、配達中の事故により損害賠償責任を負った場合の対人対物賠償保険に加入しています(上限は1億円)。この点は安心ですが、示談交渉特約はついていないようです。

また、この補償は「配達中の事故」に限定されていること、具体的には、「配達リクエストを受諾した時点から、配達が完了またはキャンセルされるまでの間に生じた事故」に限定されている点に注意が必要です。つまり、配達リクエスト待機中の事故や配達完了後の移動中の事故等は補償対象外ということになります。

上記保険の補償対象外の自転車事故の場合、配達員が別の任意保険に入っていればよいですが、そうでない場合は配達員の自己資金で賠償してもらう必要があるということになります(東京都をはじめ複数の自治体が条例で自転車保険の加入を義務付けていますが、加入しない場合の罰則はありません)。

次ページナンバープレートもないため、配達員の特定が難しい
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT