現実化し始めた工場連鎖停止、震災で部材供給至難、米国でも自動車工場停止【震災関連速報】
東日本大震災の影響で、被災地以外の国内外各地へも工場の生産停止が拡大し始めている。17日、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)がルイジアナ州の工場を停止すると発表。キヤノンも16日から、九州・大分キヤノンの操業を停止している。いずれも震災の影響で部材調達が困難になったため。部材メーカーの集積地だった東日本地方の被災で、世界の工業品生産にドミノ式に影響が波及しつつある。
各種鉱石の産地だった東北一帯は、水資源が潤沢だったこともあり、電子関連を中心とする部品・材料の生産拠点が集積している。海外への生産移管が進んだ近年でも、東北の生産拠点は高付加価値製品に傾注する形で差別化を図り、世界的なサプライチェーンの要として存在感を発揮してきた。
それだけに今回の震災で東北の多くの工場が被災すると、東北から離れた海外の産業界にも想定外の混乱を来す“逆回転”が起こっている。特に日本の係わりの深い中国、台湾の産業界からは、震災直後から部材調達への影響について強い懸念の声が上がっていた。
台湾・経済部(経済産業省に相当)は14日、重要部材であるシリコンウエハーが供給不足に陥り、台湾の液晶パネル産業に影響をもたらす恐れがあるとの見方を会見で示した。
中国の経済専門紙「21世紀経済報道」も15日付の紙面で、「中国の液晶パネル産業は今回の震災で、核心部品の供給問題に直面する恐れがある」としている。中国では2011年末から複数の大型パネル工場が稼働開始する予定だったが、これらの計画への影響が懸念される。
シリコンウエハーでは、世界シェア3割を持つ信越化学工業の主力工場・白河工場(福島県西郷村)が操業停止している。今後ウエハーの需給が逼迫すれば、液晶パネルだけでなくトランジスタやダイオードといった家電・自動車・産業機械など幅広い工業品に使われている部品の生産にも影響を及ぼす可能性が高い。
被災した工場側も対応を急いでいる。プリント配線基板の大手メーカー、メイコー(本社・神奈川県綾瀬)はソニーやアップルなど大手メーカーを顧客に抱えるが、今回の震災で主力の宮城・福島工場などが操業停止した。現在、中国の自社工場への生産移管を急ピッチで進めているが、国内では高い技術力を必要とする少量多品種の製品に特化して生産していたため、量産品を中心とする海外工場への移管は決して容易ではないようだ。国内で生産していた基板の供給再開が遅れれば、「21日の週にもデジタルカメラ工場などが生産停止になる恐れがある」(国内家電メーカー関係者)との懸念が広がっている。
被災地以外でも首都圏の生産拠点で断続的な停電の影響で、生産に乱れが生じている。家電メーカーなどは海外での代替品調達を急いでいるが、こういった対策が順調に進んでも、「6カ月程度は生産に影響が出る可能性がある」(同)との声も出ている。
(杉本 りうこ= 東洋経済オンライン) 写真は小名浜(c)google
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