発信者に学ぶ「否定的な声」を冷静に聞く技術 「アンチは混乱したサポーター」である理由

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ヒオカ:貧困問題ひとつとってみても、グラデーションがあります。完全な絶対的弱者に当てはまらなくても、発信していいはずですし、そういった存在にもっと目を向けるべきなんだよという意味を込めて、私は、センセーショナリズムには頼らないようにしています。

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伊藤:難しいところですよね。一方で、注目を浴びなければ、その問題を見てもらえない。私たち、記事のタイトルを付ける側としても、煽りたくはないけれど、読まれなければ意味がないというところもあり、日々ギリギリの線ですね。

ヒオカ:ジレンマはすごくありますね。やはり、PVは大事なんです。タイトルで強いインパクトを与えようとするのはいいと思いますが、残酷さをセンセーショナルに伝えたいだけなのか、その問題を広く知ってほしいという思いでやっているのかは、似て非なるものです。

書き手の心根はやっぱり記事に出ます。煽るようなタイトルであっても、それを読んだ方が、これを読んでよかったと思ってくれる内容かどうか。そう思ってもらえるような、質の高い記事を書くのが重要だと思っています。

貧困ポルノではなく、生活の様子を淡々と書く

ヒオカ:私は、自分の本では、貧困ポルノのようなものには抗って、1人の人間がこういう生活をしていますよというところを淡々と書いています。当事者の話を聞くときも、「私はこんなに大変で……」というものではなく、「ここが社会問題だと思います」という感覚で書くようにしています。

下種なセンセーショナリズムには抗うけど、読んでもらう努力は怠らないというバランスですね。

(構成:泉美木蘭、後編へ続く)

伊藤 あかり かがみよかがみ編集長

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いとう あかり / Akari Ito

2009年朝日新聞社入社。奈良、徳島で警察、高校野球、県政、災害などを記者として取材。紙面編集者を経て、2017年にミレニアル女性向けウェブ「telling,」の立ち上げにかかわる。2019年に社内の新規事業コンテストに応募、かがみよかがみ編集長に。2021年10月から2022年4月まで産休・育休をとり、一児の母。

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ヒオカ ライター

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ひおか / Hioka

1995年生まれ。地方の貧困家庭で育つ。noteで公開した自身の体験「私が"普通"と違った50のこと――貧困とは、選択肢が持てないということ」が話題を呼び、ライターの道へ。"無いものにされる痛みに想像力を"をモットーに、弱者の声を可視化する取材・執筆活動を行い、「ダイヤモンド・オンライン」(ダイヤモンド)、「現代ビジネス」(講談社)、「mi-mollet(ミモレ)」(講談社)などに寄稿。若手論客として、新聞、テレビ、ラジオにも出演。連載に『貧しても鈍さない 貧しても利する』(婦人公論.jp)がある。

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