部署横断プロジェクトが「やっかい」な3つの理由 権限は明確でないのに責任はあるということも

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「言うは易く、行うは難し」であることはわかっている。ただ、それをやらない限りは、プロジェクトは動かない。

そのためには、こまめに雑談する機会を設けるのでもいいし、ミーティングが終了するたび飲みにいくのでもいい。とにかくたくさん話して、腹にあるものを全部吐き出してもらう。そして解決策を探る。そういった「仲間に引き込む」努力は不可欠だ。

自組織の利害を捨てさせるという話ではない。それは消えない。ただ、「このプロジェクトを達成するために、対決するのではなく、自組織の主張、自組織の利害を表に出し、一緒に解決しよう」と思ってもらえるように持っていくことは可能だろう。

そのメンバーにも多少の二枚舌を使ってもらいながら、「自組織の利害も理解しながら、プロジェクトのゴールをともに目指す」ようになるといい。

そういう地ならしをしたうえで、リーダーはプロジェクトのゴールを明確にし、メンバーに共有する。しかし、通常の組織よりさらに細心の注意が必要なのは、そのゴールに対し、メンバー一人ひとりのコミットメントを引き出すことだ。

「表裏」を許容しない仕掛けが必要

プロジェクトチームは、メンバー全員が強くゴールを意識して行動しないとゴールを達成できない。

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通常の組織にはルーティンワーク(日常業務)があるから、強い意識を持たずに仕事をしていても、「成果がゼロ」ということはあまりない。日常業務はやっていたよ、となる。

しかしプロジェクトは別だ。極端に言えば、結果へのコミットがなければ進捗しない。「達成するか、ゼロか」だ。だからゴールへの意識、コミットメントが不可欠なのだ。

そのために、自組織の利害を代弁するために差し向けられた「スパイ」をこちらに引き込むと同時に、「裏で文句を言わせない」ということもやっていく。

表だっては「ラジャー!」と言いつつ、裏で文句や悪口を言うメンバーはどこにでもいる。それを「言わせない」仕掛けがほしい。「表裏」を許容する限り、プロジェクトはゴールに向かわない。

伊藤 羊一 武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長

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いとう よういち / Yoichi Ito

アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、Zアカデミア学長として次世代リーダー開発を行う。代表作「1分で話せ」は60万部のベストセラーに。

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