ドンキ、ドンペン交代撤回が日本経済に好材料な訳 「情熱価格」の安さの秘密が示す明るくない未来

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なぜダイエーが敗れて西友の無印良品が勝ったのか? 結果論だと思いますが、時代が短期間に不況からインフレ好況へと変化したことが大きかったと私は思います。バブルの到来で日本人の資産価値が急上昇し、1980年代を通じて給与も物価上昇以上に増えていき、日本経済が世界経済のトップに躍り出ます。安さを求めなければならない経営環境は1~2年で過ぎ去ってしまったのです。

結果として多少高くても価値を求める時代となり、かつその価値は記号に過ぎないというまさにあぶくのような経済社会が到来したことで、セービングは衰退していったのです。

40年前と同じような局面を迎えた中でどうなるのか

さて、時代は巡り、40年の時を経てまた同じような局面が到来しました。日本経済の未来がどうなるのか次第で、ドンキの情熱価格の未来も決まります。

1980年代に「価格がブランド価値に敗れた」のと同じように、2020年代の情熱価格は「価格がタイパ(タイムパフォーマンス)のような別の価値軸に敗れる」リスクはあると思います。ただ本当のリスクは、1980年代のように賃上げが起きて日本経済がプラス方向に回りだすことではないでしょうか。生活が豊かになれば「わけあって、安い。」もので我慢する必要性は薄らぎます。

逆に「歴史は繰り返さない未来」が訪れる可能性も十分にあるでしょう。1980年代とは違い、インフレが起きても賃上げはそれほど起きない。日本経済は世界経済の中で沈下していく。その結果、時代のトレンドは「理由があって驚くほど安い商品を消費者が求め続ける状況が永遠に続く」かもしれません。

そのシンボルとなるかもしれないド情ちゃんですが、日本人にとっては微妙な未来です。その意味でいえば、今回の騒動でド情ちゃんの出鼻がくじかれてしまったことは、よかったのかもしれません。私は普通に安いものが買える未来を象徴するというシンボルという意味で、ドンペンのほうを推したいと思います。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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