尾上右近、歌舞伎の型は「落とし穴でもある」訳 創造性の欠如に気づいた演出家の印象的な言葉
それには歌舞伎自体が面白いということを知らせるだけじゃなく、歌舞伎役者が単品として興味を持たれないと難しいのではないかと思います。僕に興味持ってもらわない限りは、僕が歌舞伎にお客さんを呼び込むことができない。待っていたらダメだと思うので、手を上げているのです。呼びだされるのを待っていても来ないから。だから、皆にとって魅力的な人になるためには何が必要なんだろうと考えたりもします。
いろんな経験をすることで、それぞれに合ったアプローチで教えられる
── その「魅力」についてお尋ねしますが、右近さんが考える「大人の魅力」とは何でしょう? お手本となる人は? また自分はどんな魅力的な男性になりたいですか。
右近:僕は「伝わりづらいカッコよさ」みたいなものがめちゃくちゃ好きなんです。それが「もの言わぬカッコよさ」だとしたら、師匠の菊五郎のおじさん(七代目尾上菊五郎)ですね。ふとした時にしか本音を言わない人です。しんどいなと思っている時に「大丈夫だよ」ってひと言かけてもらえただけで、すべて解決、みたいな師匠です。僕もそういう人になりたい。
でも、僕から師匠に気持ちを伝え続けないといけないと思って「大好きです」って言葉に出して言っています。この前も80歳の誕生日の時に大きなデコレーションバールーンを持って訪ねて行きました。まあ、本人は「いらねえ〜!」って顔していましたけど(笑)。
── ワハハハ。素敵なお話です。
右近:もうおひとり、『八雲立つ』で構成・演出をされている菊之丞先生(尾上菊之丞)は、精密な方という印象が強いです。舞台の隅々にまで気を配られていますから。スマートで、客観性があって、冷静で、もちろん温かくて。そのうえ、衝動的な情熱を持っている方だと思います。僕も手ほどきを受けた尾上流という流派として見習いたい。ルーツを感じる存在です。
そして自分自身は、会ったら元気が出るとか、見たら元気が出ると言われる存在でいたいです。皆さんに元気になってもらえるのが一番。「コイツ、悩みとか苦しみなんてないんだろうね」と言われたいです。
── あっ、でも先ほど「ネクラ」だと……。
右近:だからこそです!
1992年5月28日、東京都生まれ。曽祖父は六代目尾上菊五郎。母方の祖父に鶴田浩二。7歳で初舞台。歌舞伎伴奏音楽の清元唄方も務める歌舞伎界の二刀流。本年の團菊祭五月大歌舞伎『弁天娘女男白浪』で弁天小僧菊之助を好演。その活動は歌舞伎界のみにとどまらず、大河ドラマ『青天を衝け』をはじめ、ドラマ『NICE FLIGHT!』やミュージカル『衛生』『ジャージー・ボーイズ』、その他バラエティ、情報番組など多方面に活躍。映画『燃えよ剣』にて日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。大のカレー好きとしても知られる。
文/木村千鶴 写真/内田裕介(Ucci) スタイリング/三島和也(tatanca) ヘアメイク/Storm(Linx) 編集/森本 泉(LEON.JP)
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