産毛剃り禁止!「ナゾ校則」が日本にはびこる真因 千葉県の119校の校則を可視化する試みも
これと同じ感覚が、筆者にもある。子ども2人が数年前に都立高校を卒業した。思えば高偏差値の高校は自由服で校則がなかったりするのに、低い学校には厳しい校則が敷かれていた。校則を盾に管理しようとするのは、教師が子どもを信用できないからだと感じる。つまり、ブラック校則は大人の不安の表れなのだ。
日本社会の、子どもの権利への消極的評価
どうすればブラック校則をなくせるのか。
千葉県内の公立中学校の校則を調査した弁護士の1人は「植山さんの活動は、不合理な校則が可視化されることで、外部の批判を受けたり、入学者の減少がもたらされたりすることを通じ、学校の内部改革が促されるとの目的があるとお見受けした。大きな意義があると思う」と話す。
弁護士によると「子どもも権利の主体である」という意識を、大人(教員)も子ども(生徒)ももつことが、不合理な校則をなくすために必要だという。大人側は、子どもは未熟だからしつけのため制限があるのは当然であるという意識が強い。
弁護士会の有志が行った公立中学校の校則調査で、校則の趣旨を尋ねたところ「中学生らしさを保つため・中学生には不要」といった紋切り型の理由で、服装、髪型、私生活等にわたる校則を一括して正当化する傾向が見て取れたという。
しかし、子どもも人間である以上、人権を保障される程度は大人と違いはない。加えて、校則制定の趣旨について「厳しく制限をすることは保護者・地域からの要望でもある」といったものもあった。現場の教員のみならず、保護者や周囲の大人にも、子どもには厳しいしつけが必要という意識は根強く「子どもにも権利がある」という意識は薄いように思われた。
「日本の社会には、子どもが自分の希望を言う、つまり、意見表明権という立派な権利の行使をすることを『生意気』と消極的評価をする風潮すら感じる。子どもも権利の主体であることを多くの人が意識できるようになることが第一歩でしょう」(弁護士)
その歩を進めるアクセルになるのが、植山さんの活動だろう。すでに千葉県内の市立中学校の教員から「進路指導のプリントで生徒たちに紹介したい」と問い合わせも受けた。すでに10の都府県から校則データを回収したが、情報公開を求めた自治体はいずれも協力的だという。47都道府県の校則を1つのサイトで一覧できる日はそう遠くなさそうだ。
植山さんは「英語版も考えています。海外の人にも日本の課題を知ってほしい。大変ですねとよく言われますが、お金にならなくても、人生で1つくらい社会的価値があるものをやってみたい」と未来を見据えた。
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