「やさしい経営」するタクシー会社が生き残れた訳 地方に福祉タクシーがあまりない時代の先見の明

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フタバタクシーが厳しい状況の中で生き残ってきたのは、このような経営者の先見の明によるところもありますが、経営姿勢に共感し、それを実行する、顧客思いの従業員がいるからということも忘れてはいけません。

「経営方針への共感」が離職率を下げる

数年前、フタバタクシーを訪ねたときのことです。駐車場に、車内がかなり改造されたような1台のタクシーがありました。

現社長の及川孝さんに聞くと、「このタクシーは、障がいのある子供を毎日、自宅から特別支援学校まで送迎をしているのです」と説明してくれました。

きっかけは、お母さんがその子と一緒に会社に訪れ、「この子の送迎をしてもらえないでしょうか」と相談してきたことでした。その子は、最初の頃こそスクールバスで通学していましたが、次第に大声を出したり、暴れることが多くなってきたため、学校と相談して、スクールバス以外の方法で通学することになった、とのことです。

「子供も学校が好きで、通学したいと言うので、福祉タクシーのあるフタバタクシーさんにお願いに来ました」とのお母さんの依頼を、及川さんは快く引き受けました。

その後、フタバタクシーはこの子ひとりのために車両を1台購入し、この子が座る椅子やそのまわりを、どんなに暴れても耐えられるような構造に大改造しました。

特殊仕様のタクシーは完成しましたが、問題はその子供の送迎を誰がするかでした。及川さんは全ドライバーに集まってもらい、「誰か担当してほしいのだが」と話しました。誰も手を挙げなければ、自分がやろうと考えていたそうです。

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