飲酒運転の被害者遺族「人型パネル」に救われた訳 母娘の軌跡から家族とグリーフケアを考える
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交通事故や犯罪で理不尽に命を奪われた被害者への思いを白い人型パネル「メッセンジャー」に託す――。2001年から始まった「生命(いのち)のメッセージ展」は、全国各地で命の尊さを伝えてきた。
主催するのは、常設ギャラリーも持つNPO法人「いのちのミュージアム」(東京・日野市)。メッセンジャーは多くの人々に影響を与えてきたが、活動を担う遺族自身にも変化をもたらした。「生命のメッセージ展」を追う記事は今回、1組の母娘の軌跡をひもときながら家族とグリーフケアについて考える(全2回の2回/第1回はこちら)
大分県内各所で「ミニ・メッセージ展」を開催
大分県国東市に住む佐藤悦子さん(71)は11月、メッセンジャーを車に乗せて別府市役所に向かっていた。到着すると、後部座席からキルティング布を縫い合わせた手製の寝袋を下ろした。
中から取り出したのは、全部で13命のメッセンジャー(「個」や「体」「件」ではなく、メッセンジャーは「命」単位で数える)。そして佐藤さんは慣れた手つきでメッセンジャーを次々と立たせた。
佐藤さんが自宅でメッセンジャーを預かるようになったのは、今年6月からだ。NPO法人が入居する日野市の「百草台コミュニティセンター」は建物老朽化のため12月末で閉館する。常設ギャラリーで保管されている約150命のメッセンジャーは、引っ越しさせなければならない。
「下宿先」に手を挙げた1人が佐藤さんだった。以来、国東市役所、竹田高校など大分県内各所で「ミニ・メッセージ展」を開催してきた。
11月の別府市役所は県内で7回目。預かった13命の中には、実は24歳で他界した佐藤さんの二男・隆陸(たかみち)さんのメッセンジャーも含まれている。
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