ウェルビーイングが高まると学力も向上する!?
「子どもたちのウェルビーイングを高めるために、私たちに今何ができるのか」が、この連載のテーマでもあるので、今回は世界の学校現場で行われているポジティブ教育を紹介します。
ポジティブ教育とは、ポジティブ心理学の研究結果を使って、子どもたちのウェルビーイングを高めるためのスキルを教育現場で生徒に教えるものです。ポジティブ心理学とは、幸せに生きることを科学的に研究する心理学の分野で、1998年に米ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士によって提唱された比較的新しい学問分野です。
下図は、教育現場にその研究成果を導入することで、子どもたちのウェルビーイングが高まるだけではなく、学業成績も上がったということを示すデータです。
出所:ペンシルベニア大学 アレハンドロ・アドラーの博士論文「Adler, Alejandro, "Teaching Well-Being increases Academic Performance: Evidence From Bhutan, Mexico, and Peru" (2016). Publicly Accessible Penn Dissertations. 1572」
これは、ペンシルベニア大学のアルフレッド・アドラーという方が、ブータンの 18 の中等学校(8385人の生徒)、メキシコの 70 の中等学校(6万8762 人の生徒)、ペルーの 694 の中等学校 (69万4153 人の生徒) に対して、ランダムに2つに分けたグループを比較する、大規模な介入研究を行った結果です。これは、最も信頼性の高いランダマライズド・コントロール・トライアル(RCT)という手法です。
オレンジのグループは栄養学・心理学・解剖学などを学び、水色のグループは、マインドフルネスや共感、強み、レジリエンス、コミュニケーションなど、ウェルビーイングを高める10個のスキルを学びました。
どの国の生徒たちも、週2時間、15カ月にわたってプログラムを受けた結果、ウェルビーイングを高めるプログラムを受けた生徒たちは、幸福度が大幅に向上しただけではなく、成績も大幅に向上。しかもプログラムが終了した1年後も幸福度・学業成績ともに持続していたという結果が出ているのです。
「ポジティブ教育」の目的は学業達成ではなく、生徒自身の幸せですが、生徒のウェルビーイングが高まった結果、学力も向上したということです。
まずは「校長や先生など教育者をトレーニング」する理由
論文では、「3カ国の研究すべてで、忍耐力、関与、人間関係の質が、健康増進と学業成績の向上の根底にある最も強力なメカニズムであることが明らかになった」とありますが、なぜそのような結果が出たのでしょうか。



















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