しかし、次の教育振興基本計画の策定に向けて議論している中央教育審議会の部会では「一人ひとりの多様な幸せであるとともに、社会全体の幸せでもあるウェルビーイングをどう実現していくか」について議論が行われています。次の学習指導要領には、ウェルビーイングという言葉が入ってくるかもしれません。
ウェルビーイングが注目される一方で、日本人の幸福度や子どもたちの自己肯定感の低さがたびたび話題になっています。下記のグラフは、「World Happiness Report」から、OECD加盟国を抜き出したものです。日本は、レポート全体で54位。OECD加盟38カ国中下から6番目となっています。

この結果に対して、中教審の委員を務める京都大学の内田有希子先生は、質問自体が西洋的価値観に基づいていて、必ずしも日本人の幸福観を反映していないという指摘をされ、日本特有の文化的価値に基づいてウェルビーイングの定義を考えようと提案されています。
私も、この指標だけを見て「だから日本人は幸せではない」と言うつもりはありません。しかし、取材で出会う子どもたちの現状を見るにつけ、やはり日本の子どもたちに問題がないとは言えないなと思うのです。
どのデータを見ても「日本の子どもたちがよい状態」とは言えない
日本の子どもたちの現状を表すデータは、いろいろあります。
例えば、ユニセフの調査「イノチェンティ レポートカード16 子どもたちに影響する世界 先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」では、子どもの幸福度を、全般的な国の状況→子どものための政策→家庭や地域の資源→保護者の職場・学校・地域とのネットワーク→子ども自身の人間関係→子ども自身の行動の順で、多層的・多面的な新しいモデルを使って分析しています。
その結果、日本の子どもたちは、身体的ウェルビーイングが1位なのに対して、生活満足度と自殺率を指標とする精神的幸福度は38カ国中37位。スキルは27位となっています。
スキルには、学力の指標である、数学・読解力と「すぐに友達ができる」など社会的スキルがあります。基礎的習熟度に達している子どもの割合は、日本はトップ5に入りますが、「すぐに友達ができる」と答えた子どもの割合は、日本はチリに次いで2番目に低く、30%以上の子どもが、そうは思っていないという結果だったのです。精神的幸福度と、社会的スキルのうち人間関係を示す指標の低さが、今の日本の子どもたちの現状をよく表しているのではないでしょうか。
国内の調査でも、子どもたちの心理的ウェルビーイングの低さを表すデータがあります。内閣府の「子供・若者の意識に関する調査(令和元年度)」では、「今の自分が好きだ」と答えた子どもは全体の45.6%。「自分は役に立たないと強く感じる」子どもが49.9%という結果が出ています。また、厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」における10代の死因は「自殺」が1位という悲しい結果になっています。

こうしたデータをどう見るか、捉え方はいろいろだとは思います。しかし、たとえ日本と世界の幸福感が違うとしても、日本の子どもたちがよい状態とは言えないということは、明らかではないでしょうか?



















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