カルトの標的にされやすい人の「典型的な特徴」 ダブルバインドで心をがんじがらめに縛られる

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⑦「孤独を感じるときがある人」と⑧「健康に不安のある人」は、抱えている漠然とした寂しさや不安が、心の隙をつくってしまうパターンです。やさしい言葉をかけてくれたり、親身になって接してくれたりする人のことを、盲目的に信頼してしまっても不思議ではありません。人間、心身ともに弱っているときは、対人関係のガードが甘くなるものですから。

自分に自信がある人ほど危ない

そして、なにより注意すべきなのが、⑨「完璧主義といわれる人」と⑩「マインド・コントロールに絶対にかからないと思っている人」です。

完璧主義といわれる人は、他人の話を完璧に聞こうとします。だから、勧誘する人の話に没頭しやすく、内容を完璧に理解できてしまいます。その話が興味深く、賛同でき、聞いていてスッキリした気持ちになったら(カルトはそうなりやすい話をちゃんと用意して接近してきます)……その話し手の考えが自分の考えになり、完璧主義者ゆえに自分の考えは絶対と思い込み、それが強固な信念に変わってしまうのです。

自分のことを信じて疑わない完璧主義者は、じつは危険極まりありません。真面目で、信念がしっかりしていて、理屈っぽい人ほどマインド・コントロールに引っかかりやすい。これが現実なのです。オウム真理教の幹部が高学歴の面々で占められていたことは有名な話ですが、その背景にこんな構造が存在していたということがわかれば、腑に落ちるのではないでしょうか。

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そしてこれは、マインド・コントロールに絶対にかからないと思っている人にも、同じようなことがいえます。自分に自信があり、相手の話に納得がいかなければ、きっちり反論し、場合によっては論破に臨むことも辞さないタイプ。裏を返せば、同意できる話や納得のできる話であれば、相手を認めてあげることのできるタイプです。

でも、カルトは正体がわからないように近づいてきますので、その会話がすでにマインド・コントロールの一環であることに気づきません。さすがに「今からあなたにマインド・コントロールを仕掛けます。かかるかどうか勝負しましょう」なんて宣言をしてくれるわけがありませんからね。

意気投合してしまったら万事休す。完璧主義者と同様、「相手の考え=自分と同じ考え=正論」と結論づけてしまうのです。ですので、自信家だという自覚のある人ほど注意が必要です。「自分の信念を疑うことが大事」とつねに言い聞かせるようにしてください。

カルトの被害者にならないためには、自分の気質、現在の心情、置かれている環境などを冷静に分析し、自覚することが重要です。

紀藤 正樹 弁護士/リンク総合法律事務所所長

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きとう まさき / Masaki Kito

1960年山口県宇部市生まれ。大阪大学法学部卒。同大学院博士前期修士課程修了。法学修士。日本弁護士連合会消費者問題対策委員会理事を1992年からつとめ、「ダイヤルQ2部会」「宗教と消費者部会」「電子商取引部会」などの担当副委員長、委員等を歴任。市民の立場から、一般の消費者被害はもちろんのこと、宗教やインターネットにまつわる消費者問題、被害者の人権問題、児童虐待問題などに取り組んでいる。

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