11月の発表が「マツダの覚悟」を示したと見る訳 3つの新会社とそれを支える地元企業との共生

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また、話を聞いた多くのマツダ社員やマツダOBは、大きな社会変革を迎える中、マツダがとても厳しい状況にあることを理解したうえで、皆がこれから向かう方向を“自分事”として悩んでいるように感じた。同じく現場にいた4人の役員からも、“自分事”として本気で考えていることが伝わってきた。

ミニ耐久レースに参加した4人の役員とロードスター(筆者撮影)

だからこそ、彼らはマツダを愛する人たちと直接触れ、また自らが“走る歓び”を身体と頭に叩きこみ、“マツダのこれから”を語るため、自分の言葉が自然に湧き出てくるように努力している。彼らと話していて、そんなふうに感じた。

もう1つは、三重県・鈴鹿サーキットでのスーパー耐久シリーズ最終戦(2022年11月26日~27日)での出来事だ。

社長の表情からも見えた覚悟

筆者は今シーズンの同シリーズを、全国各地で現地取材をしてきた。主な目的な、マツダの次世代バイオディーゼル燃料、トヨタの水素燃料、またトヨタ、スバル、日産が使うカーボンニュートラル燃料を使った、公開型の次世代車開発の現場を見ることだ。

自動車産業のこれからを各メーカーがどう考えているのか、肌身で感じたうえで自動車産業の未来を“自分事”として考える場にしたかったのである。こうした思いは、現場を視察し、チームを応援し、ときに自らレースマシンのステアリングを握る各メーカーの社長や役員も同じだと思う。

スーパー耐久最終戦で、出場ドライバーと記念撮影に応じる、マツダの丸本明社長(左・筆者撮影)

そうした中、あくまでも筆者の個人的な感想ではあるが、最終戦で見た丸本社長の表情が、これまでのスーパー耐久の現場と比べて“すっきりした”ように思えたのだ。11月22日の発表会見でのプレゼンテーション動画でも、表情が“すっきりした”印象だった。これは、丸本社長自身が“マツダの覚悟”を十分に納得できたからではないだろうか。

鈴鹿での最終戦は、これまでのマツダの関連企業が製作した「マツダ2」ベースのマシンに代わる、「マツダ3」をベースにマツダ本社が製作した本格的なマシンの初投入の場でもあった。

結果は、トランスミッション等の課題によって完走はできたものの、チームとしては悔しいを思いするものに。しかし、レース後、ピットに集まったマツダスピリットレーシングにかかわる人たちは皆、“次の時代”に向けてさらなる挑戦を続ける覚悟を明確に示していた。激動の自動車産業大変革期の中、これからもマツダの動向を見守っていきたい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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