11月の発表が「マツダの覚悟」を示したと見る訳 3つの新会社とそれを支える地元企業との共生

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マツダの丸本明社長は、今回の会見で「グローバリゼーション崩壊の兆候が明らかになった」と発言し、地政学的なリスクが高まり経済安全保障上の摩擦が生じたことで「分断と対立が顕在化するなど、経営環境への不透明さが増している」と指摘している。

こうした市場環境の不透明さによって、マツダと関係のある地元企業の不安が増大していることは、想像にかたくない。

だからこそ今回の発表では、主要な取り組みとして「カーボンニュートラルに向けた取り組み」「電動化戦略」「人とITの共創によるマツダ独自の価値創造」、そして「原価低減活動とサプライチェーンの強靭化」の4点を挙げたうえで、新たに3つの電動化関連企業の設立を明らかにしたのだ。

この記者会見ではコンセプトカー「ビジョンスタディモデル」の姿も発表された(写真:マツダ)

サプライチェーンにおける階層を少なくするといった、大規模な事業体制の変革をマツダが決断したといえる。マツダが地元を支える覚悟を示した形だ。

マツダの幹部によると、今回の3つの新会社発足に向けて本格的な協議が始まったのは“かなり前”ではなく“かなり最近”のことだという。こうした“マツダの覚悟”に対して、複数の日系自動車メーカーの幹部は「マツダがいかに地元地域とのつながりが強い企業なのかを改めて強く認識した」という主旨で筆者に感想を述べている。

なお、マツダの電動化戦略については、今回の会見で「ほかのOEMとの関係も維持しながら」と説明していたが、これは事実上、主にトヨタのことだ。アメリカにおけるマツダとトヨタの合弁事業が、これまでの生産工場に加えて電動化戦略においても引き続き行われることを、筆者からの問いに対してマツダ本社は認めている。

北米市場で販売される「マツダ2」はトヨタから供給される(写真:マツダ)

グローバルで先行きが見通せない中、マツダは自社での新たな取り組みとトヨタとの連携によって、電動化のみならずさまざまな領域で“幅広でフレキシブル”な対応を取りながら進んでいくことが、示されたわけだ。これこそ、今回の発表で明らかになった“マツダの覚悟”なのだと思う。

マツダの理念「人と共に創る」

今回の記者発表では、マツダの経営の基本理念である「人と共に創る」が改めて強調された。「誰もがいきいきと暮らす『愉しさ』と『生きる歓び』を大切にして、人の心も身体も活性化される、ものづくり、つながりづくり、ひとづくりにこだわり続ける、ひと中心の思想だ」と説明している。

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