マグロ競りが語る物価・賃金の好循環起きない訳 給料が大きく上がらぬ消費者にコスト転嫁難しい
マグロの価格高騰からもうかがえる日本の歴史的な物価高と購買力の低下。この国特有のポリシーミックスの限界が試されているかのようだ。為替介入による円安阻止、財政出動による物価高騰への手当てを行い、金融緩和も続けるが、肝心の物価と賃金の好循環には至っていない。
世界最大級の魚市場、東京・豊洲市場では夜明け前からマグロの競りが始まる。生と冷凍のマグロがずらり並ぶ競り場に参加者が集まり、開始を知らせる鐘が鳴る。仲卸業者らが買値を叫び、活気がみなぎる。
だからこそ、卸売業者からすし店経営者まで誰もが今年抱えている悩みが覆い隠されてしまう。マグロの卸値が高騰する一方、小売業者は給料が大きく上がらない消費者にコスト上昇分を転嫁するのは難しいと今なお感じている。
日本の消費者物価は約40年ぶりの高い伸びとなっているが、政策金利の引き上げが進む世界各国の水準を大きく下回る。もっとも、値上げに慎重な商習慣が深く根付いていること、あるいはそれを受け入れにくい消費者心理という要因がなければ、もっと高い水準になるのかもしれない。
物価に変化の兆しが表れても日本銀行の黒田東彦総裁は金融緩和を堅持する姿勢を繰り返し表明している。現行政策を変更するには、物価だけでなく賃金も大幅に上昇する必要があると考えているからだ。
ポッドキャスト(英語)
漁船の燃料費や陸揚げ後の輸送費の上昇、新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻に伴う世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱-。東京都水産物卸売業者協会の浦和栄助専務理事は、観覧用バルコニーから競りを見ながら豊洲市場全体で価格が上昇している理由をこう解説した。単価の上昇は2割を超えているという。