マグロ競りが語る物価・賃金の好循環起きない訳 給料が大きく上がらぬ消費者にコスト転嫁難しい

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お客さんがついてくるかみんな怖い

さらに今年は歴史的な円安が重なった。日米金融政策の方向性の違いを主因とする円安の進行は、輸入コストを押し上げている。円安に歯止めをかけるために政府は記録的な規模の円買い介入を実施した。

ただ、価格の上昇分が消費者レベルに全て転嫁されている訳ではない。客離れを恐れて企業の多くが負担を肩代わりしているからだ。企業間で取引される財の価格上昇によって利益が圧迫されているため企業は賃上げに消極的なままで、結局、給料が増えない消費者にとって値上げは耐えがたいものとなる。

水産仲卸・吉善を経営する吉橋善伸社長(43)はこの悪循環の渦中にいる1人だ。

吉橋氏によれば、水産物自体の価格上昇だけでなく、鮮度を保つための包装用ラップや発泡スチロールも値上がりしている。こうした製品は全て原油が原材料だが、コスト上昇分の全てを販売価格に転嫁できていない。 

「みんな怖いんですよ」と言う吉橋氏。「果たしてここで値上げをしちゃって、お客さんがついてきてくれんのか」と不安を吐露した。

岸田文雄首相は今年、エネルギーや食料品の価格高騰の影響を抑えるため一連の経済対策を策定した。大企業が賃上げを実施し、この動きが広く波及することを期待しながら、日銀が金融緩和を継続するための時間を事実上稼いだということだ。中小企業を中心に円安で膨らんだコストの吸収に苦慮する一方、大規模輸出企業などは円安の恩恵を受けている。多くの企業では今も我慢比べが続く。

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