有馬温泉を復活させた「和室+ベッド」誕生の軌跡 法律の壁に阻まれ、1990年代にようやく始動

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(写真提供:ホテル花小宿)

ほとんどの人が利用したことがあるだろう「和室+ベッド」タイプの客室。そのはじまりが、兵庫県・有馬温泉にあるということは、あまり知られていないだろう。

『日本書紀』にその名が記され、日本最古の温泉地とも言われる有馬温泉は、太閤秀吉をはじめ数々の偉人に愛されたことでも知られる。そんな伝統ある湯治場から、どうして「和室にベッドを設置する」というアイデアが生まれたのか?

「1995年に阪神淡路大震災が発生しました。関西圏の観光業にとって、ターニングポイントになった」

そう話すのは、有馬温泉観光協会会長を務める、有馬温泉でも指折りの老舗旅館「御所坊(ごしょぼう)」の主人・金井啓修さん。「和室+ベッド」タイプの客室を考案したイノベーターなのだが、その話をする前に、当時の状況を説明しておきたい。

バブル崩壊で観光客が激減

1990年代前~中期は、バブル崩壊の影響が色濃く出始め、それまで団体客が多数訪れていた温泉地に、影がさすようになった時期である。有馬温泉も例にもれず、観光入込客数は、ピーク時である1991年の192万人から、1995年には102万人まで落ち込んでいた。

「それまでの旅行代理店経由の団体客ではなく、自分の趣味嗜好に合わせて宿を選ぶ個人客に対応できる宿泊施設が求め始められていた。中小旅館は、個性化する必要に迫られていました」(金井さん、以下同)

そのため、テレビや雑誌で取り上げられることも大きな付加価値を生んだ。金井さんは、「観光業が旅行代理店の時代からマスメディアの時代になったタイミングだった」とも付言する。

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