参院選の勢いはどこへ?「維新」醜聞連発で大逆風 所属議員が"新曲宣伝"、兵庫県内の市長選5連敗

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さらに、維新が大阪府外で初の首長獲得を狙って新人を擁立した11月20日投開票の兵庫県尼崎市長選も、与野党が実質相乗りで支援した新人に完敗した。これで、公認候補を立てた兵庫県内の市長選で維新は5連敗。党内には「尼崎で勝てなければ(他の首長選は)かなり厳しい」(幹部)との声が広がった。

同市長選の選挙結果を検証すると、地元新聞社の出口調査では、維新が狙った無党派層の支持は3割以下。維新候補の得票も、今夏の参院選では同市内比例票トップだった約5万2000票を4000票も下回った。

手痛い敗北について、馬場氏と共に現地入りしていた維新共同代表の吉村洋文大阪府知事は翌21日、「地道な活動が足りなかった」と肩を落とした。同様に街頭演説で支持を訴えた松井氏も「(投票率)32(%)じゃ、組織持っているところを全部敵にまわしてやっているんだから、それはもうあの結果でしょ」と維新包囲網の厳しさを認めざるをえなかった。

維新は来年4月の統一選で、県議選や県内の市町議選に約120人を擁立する方針で、維新推薦候補が挑む姫路市長選も同時期だ。ただ前哨戦での伸び悩みに同地域の担当幹部は「地方組織を強化し、やれるところからやるしかない」と肩をすくめる。

馬場代表の地位も風前の灯火?

馬場氏は代表就任に合わせ、「統一選での地方議員600人以上獲得に代表の地位を懸ける」と高らかに宣言した。しかし、大阪維新の会を立ち上げ、国政政党となった維新の創業者でもある橋本徹、松井一郎両元代表が悲願とした、「全国政党」への脱皮は困難さが増すばかりだ。

所属議員のさまざまな醜聞もあって、ここにきての各メディアの世論調査での政党支持率をみると、なお堅調な自民や上向き傾向の立憲民主とは対照的に、維新の支持率下落が際立つ。こうした国民全体の“維新離れ”が続けば、「地方議員600人以上」という大目標達成は困難で、「馬場氏の代表の地位も風前の灯火」との見方が広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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