インドネシア高速鉄道、「G20」試運転の舞台裏 発車後の映像は「録画」でも実際に列車は走った
ただ、コスト増による予算不足問題は解決していない。詳細は2022年3月24日付記事「インドネシア高速鉄道、一点『国費投入』の理由」で触れたが、当初の約60.7億ドル(約8462億円)から約79億ドル(約1兆999億円)に膨れた総工費の穴埋めに、最新の試算では21.4兆ルピア(約1898億円)の投入が必要とされている。2021年にインドネシア側のコンソーシアム企業の出資額不足を補うために投入された国家予算約4.3兆ルピア(約381億円)を大きく上回る額だが、この約4.3兆ルピアすら未だに予算執行されていない。
インドネシア側の言い分では、不足する約21.4兆ルピアも、当初の出資比率通り、そのうちの75%、約16.05兆ルピア(約1424億円)を中国国家開発銀行が融資すべきとしている。残りの約5.35兆ルピア(約474億円)はコンソーシアム企業である北京ジャカルタバンドン高速鉄道会社とインドネシア国営企業コンソーシアムの株保有比率に則り、4:6の比率で折半する。このインドネシア側が用意すべき追加出資額は約3.2兆ルピア(約283億円)で、すでに国会承認が下りている。しかし、中国側はコスト増をインドネシア側の問題として、現時点で応じていない。
「2023年6月開業を強く求める」
それでも、ジャカルタ―バンドン間の構造物は全て接続され、レール敷設作業が連日続けられている。半年後には線路はつながっているだろう。オンライン出発式典の訓示で、ルフット・パンジャイタン海事投資調整相は「これ以上の工事遅延は認めない。2023年6月の開業を強く求める」と語気を強めたが、「とりあえず走らせるだけ」なら、これはクリアできない目標ではない。問題は、この莫大な予算不足の帳尻合わせをどうするかだ。
そんな中、ブディ・カルヤ運輸相は、バンドンから先、スラバヤまでの延伸にも強気の姿勢を崩さない。その場合はジャカルタ―バンドン間と規格を統一する必要性に加え、日本政府は高速鉄道のスラバヤ延伸に協力しないことが基本スタンスのため、引き続き中国とのPPPプロジェクトとして進めていくことになる。
ブディ・カルヤ運輸相は、これをジョコウィ大統領の意向だと付け加える。つまるところ、中国側の正式な了解と大統領令があれば、いつでも着工できる状態にある。逆に言えば、ジョコウィ大統領の任期最後の年となる2024年までにゴーサインを出さなければならない。ジャカルタ―バンドン間開業と同時の延伸着工も十分にあり得る話だろう。
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