インドネシア高速鉄道、「G20」試運転の舞台裏 発車後の映像は「録画」でも実際に列車は走った

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そして、鉄道プロジェクトのビッグニュースといえば、ジャカルタ―バンドン高速鉄道の公開試運転である。インドネシア政府はG20に合わせて中国の習近平国家主席を高速鉄道試運転に招待する意向を示していたが、スケジュールなどの都合により「オンライン試乗会」の形となった。

インドネシア高速鉄道試運転
G20での公開当日、11月16日の午前中も試運転は続いていた。充当された編成はCITと呼ばれる検測用の編成(筆者撮影)

中継は、11月16日16時40分過ぎから高速鉄道の始発駅であるテガルアール駅の会場とバリをつないで始まった。リドワン・カミル西ジャワ州知事をはじめとする数十名の招待客は事前に車内に乗り込み、ホーム上ではKCIC(インドネシア中国高速鉄道)の幹部以下社員数十名が整列。バリのG20会場からオンラインで、中国国家発展改革委員会の何立峰(ホー・リーフォン)主任とルフット・パンジャイタン海事投資調整相による祝辞と訓示を受けた。

何立峰主任はその中で、「一帯一路の重大投資、建設、経営協力モデルの新たな一章を開いた。そしてインドネシアの鉄道建設技術における多くの空白を埋め、就業機会を提供、高速鉄道の建設、営業人材を養成した」と述べた。

次いで、試運転を担当する運転士2人(本務運転士は中国人)が任務遂行を宣誓し乗車、ついに16時53分、ほぼ定刻通り試運転列車が発車した。ホーム上の社員たちは、インドネシア国旗と中国国旗を持って見送った。

発車後の映像は「録画」

しかし、映像の中の列車は、現場で列車が発車するよりもやや早く出発しており、発車してからの映像は事前録画だった。「オンライン試乗会」というものの、実際には出発式典の中継だった。出発を見送ってすぐにバリ側の来賓は会場を退出し、オンライン中継も終了した。

高速鉄道出発式オンライン中継
筆者はオンライン中継の動画を見つつ、沿線でスタンバイした。奥に見える光が試運転列車のヘッドライトだ(筆者撮影)
高速鉄道試運転のギャラリー
撮影スポットには多くのギャラリーが集まった(筆者撮影)

もちろん実際に車両は自走しており、ディーゼル機関車で押して走るという最悪の事態は回避された。最高速度も時速80kmほどまで上がった。電化設備はテガルアール駅から約20kmの区間で11月上旬から供用開始しており、G20まで1週間ほどの間、連日試運転を繰り返していた。動画はそのときに録画されたものだろう。

9月時点での進捗状況では電化設備まで整備が間に合うと思えなかったが、この2カ月の追い込みは凄まじかった。そのかいあって式典当日の試運転はトラブルなく走行したが、当初予定していた20km地点よりも手前の10kmほどの地点での折り返しとなった。

ちなみに、ホームでの見送りで乗車できなかった社員たちは、その後もう1往復した際に乗車した。日もすっかり暮れた中を走る列車内はよく見える。望遠レンズで見ると、カーテンの開いた窓越しに、式典の終了と試運転の成功に安堵の表情を浮かべた社員たちの姿が見えた。

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