北海道新幹線「札幌延伸」工期と費用で前途多難 北陸新幹線敦賀開業は1年遅れ、工費は2倍に

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しかしその後、福井駅で新幹線ホーム乗降口などの増設、敦賀駅に高架上の新幹線ホーム直下に在来線ホームを設けるなどの方針変更が行われた。新たな工事費用は1兆1858億円に増えた。さらに、2019年3月には人件費の増加、耐震設計標準の改訂に伴う設計変更、工法見直しなどを理由に工事費用は1兆4121億円に増額された。

2020年春に新型コロナウイルス感染症が全国的に流行し、工事の遅延が危惧されたが、鉄道・運輸機構はその年の6月に、「2022年度末の開業には影響ない」と説明している。しかし、そのわずか4カ月後、工事が予定どおりに進んでいないことが判明した。整備費用もさらに増える可能性があるという。

検証の結果、開業時期が予定から1年遅れの2023年度末になり、工事費用もさらに2658億円増えて1兆6779億円になった。費用を当初計画と比較すると2倍近くに増えたことになる。

「状況を早めに精査したい」

今回の有識者会議の設置はこの教訓を踏まえたものだ。新函館北斗―札幌間の開業は2030年度末だが、これは当初計画から5年程度前倒しされている。工事費用は1兆6700億円だが、物価上昇、人件費の高騰といった問題もあるうえ、2012年6月の工事認可の翌7月に東日本大震災を踏まえた耐震設計標準の改正が行われた。より堅固に造るためのコストが増えることも考慮しなくてはけない。こうした状況は北陸新幹線・金沢―敦賀間とまったく同じである。

「北陸新幹線の事例を踏まえると、早い段階で精査が必要だったという反省がある。状況を早めに精査したい」と国土交通省鉄道局の中野智行参事官が話す。

青函トンネルを走る北海道新幹線
青函トンネル内を通過する新幹線E5系(記者撮影)
国縫トンネル貫通式
国縫トンネル貫通式の祝い酒(記者撮影)

有識者会議はこれまでに3回行われた。9月30日の第1回会議は現状についての説明にとどまった。10月20日の第2回会議では、工事費用の試算イメージが示され、11月17日の第3回会議では、これまで発生した費用と今後発生する費用に分けて金額が示された。会議は少しずつ進展している。

「会議ではコスト縮減策についても説明している」と中野参事官は話す。コスト削減の方法について協議しているということは、工事費用が増える可能性があるということだ。

では、工事費用はどの程度増えそうなのか。5月9日に行われた第208回国会参議院決算委員会において財務省の担当者が新函館北斗―札幌間の工事費用の増額の可能性について、「機械的な試算」として、金沢―敦賀間と同程度の工事増加率だとすると7000億円程度、西九州新幹線・武雄温泉―長崎間並みのキロ当たり単価になると仮定すると3000億円程度となると答弁している。これによれば、3000〜7000億円程度ということだ。

しかし、これまでのところ、費用の具体的な金額は報道陣に公表されていない。一部報道で増加額は6000億円台と伝えられているが、「かっちりとした数字として出したものはなく、あくまで試算のイメージとしてお示しした」(中野参事官)。ただ、「6000億円という数字は出ていない」という。

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