北海道新幹線「札幌延伸」工期と費用で前途多難 北陸新幹線敦賀開業は1年遅れ、工費は2倍に

拡大
縮小

トンネル内部の取材を終え、元いた場所に引き返すと、遠くに青い海が広がっていた。別の方角を見ると遠くに羊蹄山の山頂が顔を覗かせていた。「新幹線の車窓からこの景色が見えたら、すばらしいですね」とそばにいた鉄道・運輸機構の担当者に話しかけたら、「防音壁の高さによっては景色が見えないかもしれない」とのことだった。

鉄道・運輸機構長万部鉄道建設所長
鉄道・運輸機構長万部鉄道建設所の竹村和晃所長(記者撮影)
トンネル近くに広がる太平洋
遠くには海が広がる(記者撮影)

工事がすべて完了したわけではなく、トンネルの底部や側面にコンクリートを敷設するなどの作業が残っている。ただ、掘削工事と比べると負担は少なく、ピーク時には1日に70人程度いた作業員は今後徐々に減っていくという。工事完了は2023年4月の予定だ。

「有識者会議」立ち上げの背景

17本のトンネルのうち、掘削が完了したのは国縫トンネルで5本目。今回の工事は順調に進んでいるといってよいが、新函館北斗―札幌間全体を見渡すと、スケジュールや予算の面で順調とは言いがたい工区もある。

国縫トンネル内部
貫通した北海道新幹線・国縫トンネルの内部(記者撮影)

「自然条件への対応、耐震設計変更への対応、資材価格高騰への対応が必要だ」――。これらの影響に関して精査を行う観点から、国は北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の整備に関する有識者会議を今年9月に立ち上げた。

その背景には北陸新幹線・金沢―敦賀間の整備の遅れと工事費用の増加という事情がある。この区間は2022年度末の開業予定ということで工事が進められていたが、計画よりおよそ1年半遅れ、工事費用も増えていることが2020年10月に明らかになった。

もともと、この区間は2025年度末完成、工事費用8968億円ということで工事がスタートした。しかし、「より早期に開業するほうが経済効果は高い」という地元自治体の要望を受け、開業の前倒しが図られた。その結果、3年前倒しして2022年度末の開業を目指すことになった。

次ページ開業延期、工費も増えた北陸新幹線
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT